「・・・一体どこから攫ってきたの、骸」 「人を誘拐常習犯みたいに言わないでくれますか、綱吉君」 骸の腕にベタリと抱きつく少女を、目を真ん丸に見開いて見つめてから綱吉は呆然と言った。 その後ろに控える彼ら(雲雀恭弥とリボーンは除く)も同じように目を見開いてくるので、若干苛立ったように骸は答えた。 「いや、だって骸が人を、しかも腕に引っ付けて帰って来るなんて想像も出来なかったから」 ちらり、と綱吉は骸の腕に抱きつく少女を見つめて、半ば信じられないように言い分けするように呟いた。 それに骸も「それもまぁ、そうですね」と同意した。 「僕だって想像もつきませんでした。むしろ想像すらしたくなかったですね。・・・というか、離れなさい」 骸は腕に抱きつく少女に一瞥をくれると、バっと強く手を振り払った。けれど、少女は自然な動作で今度は骸の胴体に抱きつく。 その姿に、沈黙が部屋を支配した。 やがて、骸はその体に抱きつく少女の姿に眉間に皺を寄せながら、苛立ったように言う。 「離れろ」 一段低い声で言うと、少女はむっと口を尖らせて骸の胴体から離れると、今度は服の端を持った。 彼女なりの『譲歩』なのか、ここからは動かないと見あげてくる視線に骸は溜息を吐いた。 「・・・綱吉君、彼女は僕が先ほど潰してきたファミリーの被害者です」 「え、あ・・・。そっか・・・えーっと、君名前は?」 俺は沢田綱吉、君は?と膝を折って言う綱吉に、少女はフイっと顔を逸らした(後ろで騒ぐ隼人を、武が笑顔で抑えていた)。 ちらりと、綱吉の視線が苦笑しながら骸へと上がる。それに、骸は仕方がないというように溜息を吐いた。 「名前を答えなさい」 「。」 じっと骸を見あげながら言うに、綱吉達はあれ?と首を傾げた。 「日本、人?」 名前は日本の名前だよね、という綱吉にやっぱりはフイっと顔を逸らした。 このままでは埒があかない、と骸はちらりとを見た。 「綱吉君の言うことに答えなさい。そうすれば・・・腕、までなら許可しましょう」 心底嫌そうに、仕方が無さそうに言う骸に、はパァっと顔を輝かせた。間髪入れずにギュっと骸の腕に抱きつくと、は綱吉を見上げる。 「そう、日本人なの。えっと、拉致されて、向こうの一番偉い人のところで鑑賞されてたの。ロリコンだったのよ」 思い出しながら言うに、綱吉は「そうなんだ」と辛そうに顔をゆがめた。 けれど、そんな綱吉の表情とは裏腹に、はさらに思い出しながら平然と語る。 「ロリコンってプラトニックなのよ。知ってる?だからあたしはいっつも綺麗な格好をさせられて、おいしいご飯を食べて大切にされたから全然辛くはなかったんだけどね」 かといって拉致するようなやつ好きでもなんでもなかったし、大きくなったら殺されるはずだったからむしろ感謝しているけど。 つらつらと語るに、綱吉は虚を付かれたように目を見開いた。 それからふと我に返って、を見る。 「あ、そうだ。ちゃんを・・・」 「嫌ですよ」 じとーっと見つめる綱吉の視線に、骸はギロリとにらみを返した。 「・・・命令・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうやって僕を命令という言葉で縛り、追い詰めるつもりですか、ああそうですか」 だって懐いてるし、と見あげてくる綱吉と腕に抱きついてくるからの視線に骸は盛大に溜息を吐いた。 「わかりましたよ、恨みますからね!」 行きますよ!と半ば強引に乱暴にを引っ張っていく骸に、綱吉は「ごめーん」と言葉を送った。 |