「君の部屋はここです。まぁ、僕の部屋は仕方が無しに隣にあります。その向こうは僕の部下の部屋が3つ並んでいます。敵襲・病気・不都合があればまぁ自分でなんとかしなさい」 骸の部屋や部下の部屋を教えておきながらそれはどうなんだ、という言い草だがはしっかりと頷いた。それに僅かに骸は眉間に皺を寄せる。 先ほどからは骸の言葉に従順で、否定する、ということを知らないようだった。 (勿論それは骸が相手だからこそであって、他の人間に対してはその言葉に答えようとすらしなかったが) ちなみに、は未だ骸の腕に抱きついたままだ。 それに骸は最初は嫌そうに顔を顰めていたのだが、どんなに冷笑を浴びせても離れないに既に諦めた顔になった。 今別件の仕事でクローム髑髏、犬、千種の三名は部屋を空けていた。 だから、もし何かあったら確実に自分が何かしなければならないのだろう、と思うと骸は少し憂鬱になる。 そうして、憂鬱になるということ(他人に左右されているということ)自体が非常に不愉快で仕方がなかった。 「まぁ、とりあえず夕食も近いですしね。食堂に行きますか」 食べたければついてきなさい。そう言う骸に、はまた後ろをついていった。 「・・・汚い」 ゲンナリとした骸の言葉に、はちらりと散らばったご飯を見た。 の目の前の器からは半分以上の具材が飛び散り、上手くナイフで切れなかったのか、メインはグチャグチャになっている。 一言で言うと、やっぱり汚い。 「僕は汚いものが大嫌いです。わざとですか?不快なのでさっさと何とかしてください」 まさか一人で食べれないわけじゃないでしょう?というとは困ったように目下のご飯を見た。 惨状、と名づけるのが相応しいような光景。 「・・・食べれないの」 「は?」 が困ったようにご飯と骸の顔を交互に見ながら言って、骸は不快そうに眉間に皺を寄せた。 勿論その言葉が分かった上で、理解しがたい、という意味だ。 「いっつも向こうの偉い人がやって、あたしは口をあけて噛んで飲み込むだけで良かったから」 だからナイフとフォークの使い方が分からないの。 というに、骸は少し閉口して、それからガタリと立ち上がった。 慌てて立ち上がろうとするを制止すると、席を外す。 それを目で追うと、骸はどうやらカウンターの方まで行っているようだった。 「むく、ろ」 心配そうにじっと先ほどまで骸の座っていた椅子を見つめるの目の前に、ガシャンと一つの食器とスプーンが置かれる。 そこには柔らかくおいしそうな、そして食べやすそうなポテトサラダ。 「貴方に餓死されると僕が綱吉君に怒られますからね。スプーンでいいでしょう。それも出来ないなら手づかみで食べなさい」 後は知りません、と言わんばかりに放り出した骸を見て、は幸せそうに笑った。 そのスプーンをぎゅっと握り締めて、骸を見あげた。 「大丈夫、スプーンは使えるの。ありがとう、骸」 ニッコリとが笑って言うと、骸は不快そうに眉を寄せた。 けれどは気にしないようにニコニコ笑っていて、そうしてさらに不快を前面に押し出して言った。 「別に貴方のためではありません。勘違いしないでくれますか、気分が悪い」 目の前でパクパクと綺麗に食べる骸に微笑みながらも、は骸が持ってきたスプーンを使って遅れないように食べ始めた。 |