恭弥君はあたしのヒーロー。 所謂幼馴染、っていう立場のあたしはヒロインって呼べるほど可愛いわけでもなく、細くてキラキラ輝くようなお姫様でもなく。 庶民って言葉がピッタリの、なんてことはない普通の、ちょっと馬鹿な女の子。 恭弥君のスパルタ家庭教師のおかげで成績は普通だけど、行動とか言動が馬鹿なんだって。 でも、それはきっと恭弥君が大好きだから仕方ないんです、っていうとお父さんが苦笑しながら恭弥馬鹿だなぁ、って言っていた。 「どうしたの?」 丁度一年生の教室の前を通っていると、茶色い髪の男の子が銀色の髪の男の子と一緒にボンヤリと教室の方を見ていた。 「え?あ・・・その・・・」 茶色い髪の子が答えて、ちらりと視線を動かしたので、あたしもそっちを見てみる。 と、 「あーあ・・・割っちゃったんだ」 見事に粉々になった窓ガラスが見えた。 「す、す、すみません十代目!!ついつい熱くなってしまってっ!!」 銀色の子が十代目、と呼んだ茶色い髪の子に謝っていた。 「い、いや、俺は怪我ないからいいんだけど・・・雲雀さんが・・・」 来るよね、絶対・・・。 ハハハ、と涙を流しながら笑う茶色の髪の男の子に、銀色の髪の男の子が「俺があいつをやります!」とかって言って、ポケットから蝋燭みたいな・・・ダイナ、マイト・・・かな?を、取り出した。 そうしたら必死に茶色い髪の男の子が銀色の髪の男の子を抑えていた。 凄く遠くで、黒い軍団が見える(よく映えるんだよね、あの色)。 しかたないなぁ。 「教室入ってて。ここはあたしがおさめとくから」 ね?というと茶色い髪の男の子がそんな!と叫んだ。 銀髪の子は戦る気満々だったけど、茶髪の子と一緒に教室に押し込めた。 「・・・ガラスが、割れたってきいたけど」 学校じゃ全然関わらない恭弥君の声が聞こえた。 学校でも話したいって言ったら、あたしは構わないのに、の友達がいなくなるよ、と止められた(本当は優しい人なのに)。 「はい、あたしが割りました」 教室の中から茶髪の子と銀髪の子が見えた。 「・・・割ったのは一年の男子って聞いたんだけど」 「誤報だね、きっと」 だってあたしが割ったんだからというと、後ろから「雲雀さんにあんなこと言って・・・死にたいのか?」みたいな声が聞こえた。 失礼な、恭弥君はこの短い人生の中で、一度だってあたしを殴ったことないよ! 「目撃者もいるんだけど」 「見間違いだったんだよ」 恭弥君にニコニコ笑っていうと、恭弥君は深く溜息を吐いた。 「友達いなくなるよ」 「恭弥君がいるからいいんだよ。あ、反省文書きに行こう」 応接室ってどっちだっけ?と聞くと、恭弥君が右、というのであたしは恭弥君の手を掴んで歩き出した。 後ろから好奇の視線とか、ザワザワした声がするけど、結局あたしは恭弥君がいればいいんだよ。 そう言うと、恭弥君に「って馬鹿でしょ」と言われた。 |