ドキドキしてしまうの。 そのピンクの唇に触れたいと思うし、その頬にも触りたいし、傍にいたい。 友人の大切さじゃないの。 恋愛感情みたいにドキドキしてどうしようもなくて、凄く凄く切なくて。 でも、あたしは女の子。 相手、ハルも、女の子。 どうしようもないっていう感情なのかもしれない。 だって、一般的に考えて女の子が女の子を好きになるなんておかしいことだ。 きもちわるいって思うかもしれないし、もしかしたらもう話し掛けないでって言われるかもしれない。 ハルに軽蔑の目で見られたら(そんなことはしない子だって知ってるけど)あたしは多分、生きていくことが出来ない。 息だって吸えなくなるし、目だって開けられなくなるし、もう心臓を動かすことすらできなくなるかもしれない。 それほど、好きで好きで仕方が無いけど、あたしは女の子。 ハルも、女の子。 同じクラスで、最初隣の席で一番に仲良くなった。 凄く明るくて、ちょっとテンションは高いけど思いやりがあって優しい優しい女の子。 誰とでもよく話すし、正義感もあるし、礼儀正しいし、時々空回りするところが可愛い。 ハルに好きな男の子が出来たらしい。 報告されたとき、あたしは凄くショックでショックで仕方が無かった。 泣き出しそうになってしまったくらいに。 凄く幸せそうに「ツナさん」のことを語るから(それこそ嫉妬すら出来ないほど綺麗に)。 ああ、しょうがないんだって思った。 だって、結局女の子が女の子を好きなんて気持ちは受け入れられるものじゃなくて、むしろ逆に嫌悪されるほうで。 ハルは男の子を好きになる普通の女の子なんだから特に。 きもちわるいなんて言われたら、どうしよう。 好きだよなんていえるはずもない。 嫌われたくない、ハルに、嫌われたくなんて、ない。 あの笑顔が見れなくなるなんてそんなの絶対にいやだ。 女の子だから好きなんじゃない、ハルがハルだから好きなの。 あの笑顔とか、性格とか、芯の強さとか、行動力とか、ドジなところとか、全部全部含めて。 ハルだから好き。 きもちわるいなんていわれたくないし、言われたらあたしは生きていくことなんて出来ない。 だから、全部内緒。 ハルは大好きな「ツナさん」のことをいつも通りに語って、あたしに笑ってくれる。 幸せなことだよ、きっと。 だから構わないよ、ずっとずっと友達でいるよ。 見ないフリをすればいいんだから。 ドキドキする気持ちも。 その唇に触れたいと思う気持ちも、手を繋ぎたいと思う気持ちも、恋愛感情は全部全部見ないふり。 そうしたら、ハルはあたしに笑ってくれる。 |