「山本」
ガラリと、あたしは扉を開けた。

お店の手伝いをしてた山本に、あたしはできるだけ綺麗に笑う。


「諦めました!」
やっとね、と笑うと、山本もニカっと笑ってくれる。

「お疲れさま」


格好いいなぁ・・・・あ?
思わずポツリと考えてしまって、あたしは心の中で瞠目した。

いやいや、まてまて、格好いいなぁってなんだそれ。
落ち着け、落ち着くんだ・・・ひっひっふー!ってこれラマーズ法だよっ!

ぐるぐる頭の中で考えてると、山本が大丈夫かと顔をのぞいてきた。


「だ、大丈夫です・・・」
そう答えると、山本はニカっとそれはそれは太陽のような笑顔で笑って。
ああ、そういえばハルは友人のカテゴリーに入ったんだよなぁ、と思う。


んー・・・いやいや、まて。おかしいよ、あたし。
そりゃ、確かに恋愛で一番だったハルは友人で一番になりましたけどね。

いやいや、何、これ、どういうこと。


ひょっとしてあたしって・・・・・・・・・・笑顔に弱いんですか?



ちょっとまて、落ち着こう。
あたしが深く深呼吸をして山本を見ると、山本はニカっと笑顔で笑った。

あれ、ハル、越えた・・・?



、一体どうしたんだよ」
気分でも悪いのか?

そう山本が心配そうにあたしを見てくる。


そんなことはいいから、いつもの笑顔で笑ってくれたらいいのに。

・・・・・だから落ち着けってばあたし!



「いやいやいや、何でもないんでですよ!ええもちろん!!」
「でも顔赤いぜ?熱でもあるのか?」
日焼けした細い指があたしの額に触れた。


や、まて・・・ちょっと待て。

そりゃ、確かにハルのことが恋愛感情で好きだって暴露して、そこでそれでもいいんだって慰めてくれて、そりゃぁいい奴だと思いましたとも。

ニカって笑う顔はハルに似てるなぁと思ってたけどね、うん。

「あっ・・・」
「あ?」
フルフルと体が震えた。
顔はまるで熱の時みたいに熱くて仕方がなかった。


「あ、ああ、あんたの笑顔は、ハルを超えてなんていないんだからーーー!!!!」
馬鹿やろー!!!と思いっきり油断してた山本の顎にアッパーを食らわせた。


ああ、なんだこれ!
バクバク心臓が動いて(ハルと一緒に居たときみたいに)(ううん、それ以上に)あたしはお店から思いっきり飛び出した。

おーい!と声が聞こえて、振り返ると山本が追ってきていて、あたしは走る速度を上げた。

「絶対に違うんだからぁああああ!!!」
「何がだよ!」


ハルの笑顔を越えてなんかいないんだからっ!





最後に笑った奴が勝つ



( それでもいつまでも追いかけてくる奴に、あたしは結局認めざるを得ないような気がした )


  →