「はいはい、ごっきゅんもこっちねー」 あれからずっとハルと一緒に並盛に来るようになって、最近は二人きりにさせてあげようと前を歩いた。 俺は十代目のお傍に!と叫ぶ獄寺はラリアットを食らわせて黙らせておく。 沢田の京子ちゃんという女の子への気持ちは憧れってはっきりしたし、男ならはっきりしろや!と喝も入れておいた。 (そうしてまた獄寺がうるさかったのでラリアットも忘れない) 真っ青な顔をした獄寺を引きずる山本と会話しながら歩いていると、突然背中にドンっと衝撃がきた。 「ちゃん!」 振り返ると、そこにいたのは嬉しそうに笑うハルで、あたしの顔も綻んだ。 「どうしたの、ハル」 「ハル、ツナさんに遊びに誘ってもらいましたっ!」 なので報告に来ました! ・・・って、ハル、それって普通家に帰ってから電話とかでするものじゃない? そう思っていうと、ハルが思いっきりにっこりと笑った。 「ハル、ちゃんが女の子で一番大好きです!だから、一番にすぐに報告したかったんです!」 えへへと笑うハルに、あたしは少しだけ泣きそうになった。 でも、堪えて笑顔で笑う。 「あたしもハル大好きー!!一番大好きだよ!」 女の子でね、と付け加えて、思いっきり抱きついた。 するとハルはすぐに抱きしめ返してくれて、ぎゅーとかキャーとか色々言いながら抱き合う。 ちょうど向こう側で沢田が少しだけ羨ましそうな顔をしていて、ニヤリと笑ってやった。 (うん、これくらいの報復とからかいはさせてもらわないと) 一層強く抱きしめると、ハルも強く抱きしめ返してくれた。 ああ、なんかもう、いいかもなぁ。 ホコホコと温まる心に、あたしは笑った。 恋愛感情なんて、もういいかもしれない。 だって、あたしはどんな意味であれ、ハルの特別になれてるんだ。 だったら、それは恋愛感情を昇華するよりも、すごく素敵なことだと思う。 ハルが笑っていて、あたしはとても嬉しくて。 心の片隅で泣いていたあたしの心は、何故か大泣きから小さくホロリと涙を流す程度になっていた。 これでいいんだよって誰かが笑ってるような気がした。 体を離して、ハル突進だー!と沢田に向かって背中を押したり、5人で団子みたいに固まって騒いだり。 沢田の隣でハルがすごく笑顔で笑ったり。 ハルの隣で沢田がすごく笑顔で笑ったり。 嬉しそうに楽しそうに笑いあう二人に、あたしは顔が綻んだ。 少しだけ、チクリと胸が痛んで。 でも、思っていたよりも全然痛くなかった。 二人の笑い声が聞こえて、ハルはあたしにも笑いかけてくれて。 あたしはやっとその日、失恋をした。 |