ギラリと狂気的な光を反射する銀色のトンファーをあたしの首筋にあてている黒髪ビューティフォーな男の子。

この並盛で知らないものは居ないと言われているほどの権力者――雲雀恭弥。
気に入らぬものはトンファーで咬み殺し、群れるやつはトンファーで咬み殺し。

そんな危険でバイオレンすなこのお方は・・・あたしの、未来の旦那様です。



「ヘーーーーーーーールプ!!ヘルプ忠犬草壁ぇえええ!!お前の上司の未来の花嫁がピンチだぞー!!」
首にあてられてるトンファー。それは慣れっ子だからいいの。

問題は、あたしの腕にありやがる30cm四方のダンボール箱。inびっしりの本。
重い・・・果てしなく重いよ。


「草壁なら見回りに行ってるよ」
わぁい、素敵なSっ気笑顔ですね、ダーリン。
残念だったね、と恭弥さんはものすごく楽しそうに笑った。

「ちなみに他の奴等もいないよ」
良かったね、二人きりで。にっこりは素敵ですけど、何だか逆に恐怖を覚えます、S恭弥さん。


「う、う・・・」
「これでも僕、かなり善処してあげたんだよ。本当は1箱なんかじゃなくて10箱運ばせたかったし、体に重りつけたかったし、それから片付けをさせて、デスクワークだってさせる予定だったし」

ひっ、いっ!
恭弥さん、恭弥さん、これでも私一応あなたの婚約者です、恭弥さん。

できれば、もっと優しくしてあげてください・・・。


「あの・・・1箱でもう死にかけなんですが・・・」
腕プルプル震えてます、まじで。

「まったく、は体力とか忍耐力ってものがないね。折角僕が優しく1箱運ぶだけでいいって言ったのに」
「す、すみません・・・」

体力は普通だと思いますよ、恭弥さん。
ただでさえ分厚くて重みのあるハードカバーが大量って、そりゃないですよ。
しかも隙間なんてものはない。



「う、うぅ・・・鬼嫁ならぬ鬼夫・・・」
こっそりと恭弥さんに聞こえないように呟いた。




見慣れた廊下にふと顔を上げると、そこには応接室のプレートが見えた。
やっと!やっと終わるっ!

「それにしても、は馬鹿だね」
突然恭弥さんが呟いた。
にやにやにやにやとSっ気の激しい笑みを浮かべて(お、恐ろしい)。


「別に僕、手で運べなんていってないよ?荷台で運ぶな、なんて言ってなかったんだけどね」
ズルリと荷物がずれた。

「まったく、将来僕の伴侶になるんだから、もっと賢くなりなよ」
わぁ、伴侶っていうんですね、格好いい(あは、ははは・・・)。


ドサリ、と重い音を立てて箱が地面に落ちた。
ちょっと、足が痛かった(肩方の足の上におちた)。

「ど、どうせ体力ないし、アホだし、馬鹿だし、間抜けですよっ!恭弥さんのばかーーーーー!!!」

うわーんとあたしは泣きながら走っていった。

役に立たない草壁のせいだ、そうなんだ。
思いっきり責任転嫁をしながら走った。





サディストダーリン



( とりあえず苛めより何より素直な愛が欲しいです )


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