越前リョーマ。
その名は天を轟かせるほどの・・・というわけではないけれど、全然テニスを知らなくても知ってる人はたくさんいるっていうくらい有名な、テニスプレイヤー。
そんな人と私は所謂・・・えーっと、なんだっけ・・・はとこ?っていうのかな。とにかくそんな関係にあたって・・・えと、つまりは親戚ってやつだ。
とはいっても1年に一回会うか会わないかってやつで、今日は法事で親戚が集まってるんだけど。


「あんたでいいや。―――ねえ、俺と結婚してくれない?」

「・・・はい?」


私耳が遠くなっちゃったのかな、うん多分そんな感じかな、きっと。だって聞き間違いじゃないとおかしいもん。
目の前で某有名美形テニスプレイヤーこと、リョーマくん(越前はおじさんもおばさんもいるんだから仕方がない)の口から、今プロポーズらしき言葉が出たような。

「俺さ、ストーカーされてるんだよね」
「はあ・・・・・・えぇ!?す、ストーカー!?」
さらっと言われたけど、ストーカーってあれだよね?こう毎日帰り道ついて来たりとか、盗撮したりだとか、一日の行動を綴った手紙を送り付けられたりとか、最後には貴方を殺して私も死ぬ―!みたいな。
「そ。何勘違いしてんだか知らないけど、何度も記入済みの結婚届けを送ってくるんだよね」
「は、はあ・・・」
そっか・・・リョーマくん格好いいもんなぁ。
姿だけじゃなくて中身も格好いいし、正直私の初恋ってリョーマくんで、いまだにそれ以外好きな人もできてないっていうか、ぶっちゃけると今でもリョーマくんが好きっていうか。
・・・いやいや、それは置いといて。

「そ、それは物凄く大変なんじゃ・・・」
「下手に騒がれたり事件になっても困るからね。送ってくるだけだし放っておいたんだけど・・・あまりにもしつこすぎるんだよ」
どおりでなんか疲れた顔してたんだ、リョーマくん。
てっきりテニスの試合で疲れてたのかと思ってたんだけど、精神的な疲れだったんだ。

「っていうわけで、。俺と結婚してくれない?」
「う、うん・・・・・・うん!?」
反射的に頷いたけど、なんかおかしくない!?
あれ、さっきまで確かにストーカーの話をしてたような気がするんだけど、それが一体全体どうして結婚のお話に!?
しかも今度は絶対に聞き間違いじゃなく、結婚してって言ってるように聞こえたよ!?


「え、えーっと、リョーマくん。さっきまで、ストーカーの話だったよね?」
「まあね」
「それが一体全体どうして結婚のお話になったの?結婚って単語くらいしか繋がらない気がするよ?」
「そう、それ」
・・・それ?
こくりとリョーマくんが頷くけど、えええ?ストーカーから送られる結婚届けと私との結婚とのどんな繋がりが?
と籍を入れるだろ?」
「う、うん」
「それでもうストーカーが勝手に結婚届けを出そうとしても、結婚できないでしょ?」
「私と結婚してるから?・・・でも、そのストーカーそれだけで諦めてくれるの?」
だって結婚したからーっていうので諦めてくれるような人だったら、結婚届け送ってるの無視されてる間に諦めてくれそうな気がするし。
そう言うと、リョーマくんが眉間に皺を寄せて、なんとも言えなさそうな顔をした。

「確かに・・・そこが一番ネックなんだけどね・・・」
「第一、そんなに素直に諦められる人なら・・・まずストーカーになってない気が・・・」
「全くもっての言う通りだね。・・・だから、下手な人間巻き込めないんだよね」
そういえばプロのテニスプレイヤーって事件とか事故があると駄目っていうし・・・だからあまりリョーマくんも事を大きくしたくないのかな・・・。
うーん、でもリョーマくんってテニス以外にも有名だし、ストーカーされてるってバレても助けてもらえたり同情してもらえるだけで、マイナスイメージにはなりそうにないんだけど。

「―――
「え・・・っ、ひゃ、ひゃい!?」
考え込んでいたせいで下に向いていた顔をあげたら、すぐそこにはリョーマくんの綺麗な顔。
うわわ、ちょ、本当に毛穴が見えないくらいに綺麗な肌・・・!って、私着眼点そこかよ!

「俺と結婚してくれる?」
「は、はい」





Would you marry me?



( あああ、思わず頷いちゃった、皆も反対して―――え?もう両親に許可は貰ってるってぅぇえええ!? )


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