「はい、結婚指輪」

流石にぽんと投げ渡されたわけじゃないよ、ちゃんと左手の薬指にはめてもらったよ!
・・・って、私はいったい誰に言い訳してるんだろう・・・。

兎に角、リョーマくんといつの間にか結婚することになり、その日の内に結婚届けも出しに行って、それでリョーマくんのアパートに引っ越すことになりました。
なんかドナドナの歌が流れてた気がするのは私だけなのかな、ねえ。

兎に角、そんなこんなで私の左手の薬指にはダイヤが指輪にこう、埋まった形っていうか・・・えっと、引っかかりそうにない感じの指輪がキラキラと光っていた。
う、うわぁ、多分本物だよ・・・これ、本物だよ・・・。
「りょ、リョーマくん・・・な、なんで、これ」
「流石に部屋に閉じこもってるわけにはいかないでしょ。結婚してるのに指輪が無いっていうのもおかしいしね。家事とか風呂の時以外は付けときなよ」
「あ、う、うん。・・・って、いや、あのそうじゃなくて、なんで私の指のサイズ・・・」
測った覚えなんてないのに薬指にぴったりなんですけど・・・。
「そんなの見ればわかるでしょ・・・まだまだだね」
にやり、とリョーマくんが笑った。
み、見ればわかるものなんだ・・・・・・。



「とりえあず今日から一緒に暮らしてもらうわけだけど、俺は今シーズンオフだし、も長期の休みだし。まあ、家事は分担でいいか」
「う、うん」
「散らかさなきゃこの家の中のものはラケットとか以外なら勝手に使っていいから」
「わ、わかった・・・。え、えっと、リョーマくん」
「ん?」
リョーマくんの言うままにうんうんと頷いたけども、それよりも何よりも、気になることが一つあるんだけど・・・。
ものすっごく、大切なことが。


「わ、私どこで寝ればいいの・・・?」


部屋の中を案内してもらったんだけど、一部屋一部屋が広い代わりにそんなに部屋数が多いわけじゃない。
リビングキッチンに、寝室にお風呂にトイレに、あと物置みたいになってる部屋。
リビングにあるソファは確かに大きいから寝れるだろうけど、ストーカーのことがいつまで続くか分からないし、ソファは流石に勘弁してほしい。
ってことは、あの物置部屋に布団を敷いて寝ることになるんだろうか。

「どこって・・・寝室だけど?」
「へ・・・?じゃあ、寝室に布団を敷くの?」
リョーマくんが寝てるベッドは所謂セミダブルベッドっていう大きさで、広い寝室だから確かにもう一人ぶんか二人ぶんくらいは床に寝るスペースもあるけど。
「何言ってんの。夫婦なんだから、二人で一緒に寝るに決まってるでしょ」
「そっかそうだよ・・・って、い、一緒!?」

い、一緒ってことはつまり、その、正しく言えば、リョーマくんと私が同じベッドの中に入るっていうことで。
つまりあのセミダブルのベッドの中ってなると、かなり近い距離にリョーマくんがいるっていうことで。
え、えっと、それってつまり、どういうこと!?

「くっ、くく・・・安心しなよ。俺に手を出すほど飢えてないから」
「う、ううん。そこは心配してないんだけど、その、そうじゃなくって」
「・・・」
ほら、リョーマくんにはもっとセクシーで素敵なお姉さんとかがお似合いだと思うし、こんなチンチクリンのガキじゃ・・・って、うわぁ、自分で言ってて落ち込んできた・・・と、兎に角!リョーマくんがそんなことしたりしないだろうし!
それよりも心配なのは、そんな近い距離にリョーマくんがいて、
「わ、私眠れるかなぁ・・・」
今でさえリョーマくんとこんなに一杯お話して心臓が爆発しそうなのに、リョーマくんと一緒に寝るとかって、わ、私の心臓二、三個くらい消費しちゃうんじゃ・・・!

「とりあえず、ストーカーなんてのが相手だし、面倒かけるかもしれないけど・・・」
「ううん!それは平気なんだけど、むしろそれよりも心配ごとが・・・・・・って、それは置いといて」
ストーカーのことよりもリョーマくんと生活して心臓が耐えられるかどうかの方が心配って、流石に言うわけにはいかないし。

「え、えと、あの・・・ふ、ふつつかものですが、よろしくお願いします」
「・・・ん、よろしく





奇妙な結婚生活



( 他人よりも近くって、でも恋人には程遠い )