某日、桜咲く入学式。あたしは、あなたに、恋をしました。




「あああああああああああ、跡部跡部跡部あほべーーーー!!!!」


「ってめ、人の名前連呼してんじゃねぇよ、馬鹿っ!つーか、先輩くらいつけやがれ!」

バタバタと3年の教室に走ると、跡部の見事な突っ込みが入った(というか、最後のあほべはいいのかな・・・)。
というか、尊敬なんてしてないんだから先輩なんて呼ぶわけないでしょうが!


「じゃあ、あほべ先輩!」
「・・・土へ還れ!!」
いっそのこと俺様直々に埋めてやるよ、と叫ぶ跡部を無視して、あたしは「ねぇねぇ」と机を叩いた。
そんなことはどうだっていいんだってば、跡部。

「あのさ、あのさ、あんた部長になったって本当?ナルシストなのに部長になれたって本当?」
「その後のはいらねぇんだよっ・・・!!――まぁ、それは本当だが。何だよ」

「ってことは、今テニス部はあんたの絶対王権なわけね!?」
まぁ、なんていっても跡部だし。


俺様なところとかナルシストなところとか、「俺様の美技に酔いな」とかぶっちゃけお前頭イカレてんじゃねぇの?みたいな台詞を言う跡部だとしても、一応カリスマ性っていうの?はあるしね。
とりあえず部長としては、あのおたくでエロで伊達眼鏡なくせに何げ恐い忍足先輩とか、飛んでばっかりの向日先輩とか、趣味は髪のお手入れな宍戸先輩とか、万年寝太郎なジロちゃん先輩とか、ブラックな滝先輩とかよりはいいけども。


「おまえ、さり気なくうちの部員貶めてねぇか?」

「気のせい気のせい。それよりもさ、2年に日吉君っているよね」
いるよね?いるでしょ?つーか、いなかったら締める・・・。


「ん?ああ、あの下克上男か」
「げこく、じょう?」
なんか、ならったような気がしないでもないぞ、うん。


「馬鹿だな、てめぇ・・・。兎に角、いるにはいるぜ?」
この俺様が支配するテニス部にな、と高らかに言う跡部はとりあえず無視しておいた。

そっか・・・いるのか。
ちらりと、ナルシストで俺様で、ぶっちゃけ頭イカレてんじゃねぇの?って思う一応部長な跡部の方を見た。


「・・・あーとべ」

「・・・・・・・・・・・・・なんだ」
何でそこで一気に顔青くして後ずさるかなぁ・・・。


んふふーっと笑うと、さらに跡部が顔を青くして、今じゃ青を通り越して真っ白だ。
酷い、跡部ってば一応先輩のくせに、後輩の笑顔に微笑み返さないなんて、ダメダメな先輩だね、本当に!
だから尊敬してやらないんだよー。


「跡部はテニス部の部長、テニス部は跡部の支配化。オーライ?」
何が言いたいかってのは、跡部が分かってるよね?
うん、わかんなかったら本当にあほべになるからね、跡部。

「お、おお、おお」

あははは、だから後ずさらないでよ、本当にもう。


「いやー、そりゃね、別にジロちゃん先輩がどうなろうとも、向日先輩がいくら飛んでいようとも、宍戸先輩の髪が幾ら靡いてても、どうでもいいから。頼みごと聞いてくれる?」

聞いてくれなかったら服ひんむいてお嬢様方に売るぞ?こら。
にっこりと笑うと、ガクガクと跡部が頭を揺らした(うん、恋する乙女は強い)。



「あたしを、マネージャーにして?」





拒否権なんてものは無い!



( むしろ奪うね。あ、抵抗は許さないから )


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