不細工か?と言われればNOと答えるだろう。 可愛いか?と言われればNOと答えるだろう。 太っているか?と言われればNOと答える・・・だろう。 細いか?と言われると必ずNOと答える。 このたび、氷帝学園中等部硬式庭球部のマネージャーになった少女は、そんな少女だった。 「つーわけで、こいつがマネージャーになることになっただ」 「はーい!2年生のです!従うものには仲良く、反抗するものには数倍に返します。マネージャーって普通美少女とかじゃねぇのかよっていう奴は、とりあえず体育館裏で指導しますので、ご容赦くださいませー」 それは、普通この氷帝のマネージャーにつく女の挨拶なのだろうか・・・とテニス部全員が沈黙した。 何せ、マネージャーの挨拶の常套句と言えば「慣れない仕事ばかりですが、一生懸命頑張ります!」とか、「みんなのサポートが出来るように頑張ります!」とかじゃないのだろうか(そういうことを言う女は大概レギュラー目当てだったが)。 「てめぇは馬鹿か!そういう時くらい猫被っとくもんだろうが、あーん?」 「うっさい、あほべ。猫被ってどうすんのよ。可愛い女に見られたいわけじゃないっつーの。つーか見られたらキモイんじゃぁ!」 「誰があほべだ、あ゛あっ!?」 確か彼女は2年生だと言っていなかっただろうか、とまた沈黙が走る。 この学校の生徒会長であり、帝王と呼ばれるほどのカリスマ性があり、美形で、恋をしない女性は居ない、なんて評判があるくらいの跡部景吾を「あほべ」という女子を見るなど、彼らは初めてだった。 「いやー、いつも面白いなぁ、ちゃん」 「お、おぉおおお、忍足せんぱっ、い!」 ビクリとが身体を震わせた。そうして忍足を見上げる視線は怯えを含んでいる。 「ちゃんだC!」 「重い、重いっす、ジロちゃん先輩っ!!」 折れる、折れるぅうう!と叫ぶ梓の言葉など一切気にせずに慈郎は梓の背にのしかかる。 時々ミシミシいっているのは無視らしい。 「じゃん」 「うっさい、いつ名前で呼んでいっつった、このミソ男!!」 「は、激ダサだな」 「ださいのはてめぇだよ、このキューティクル!」 とりあえず上体が90度を越したことに関しては誰も突っ込むものなどいないらしい。 ――プツン、と音がした。 「だぁあああ!どきなさいよ、この阿呆先輩共っ!群がるな!先輩たちに懐かれたって全然面白くないんですー!!」 ジタバタと身体を動かすにとうとう慈郎は落ちてしまって、やっとピシっと立った。 そこに、 「・・・何してるんだ・・・」 はぁ、と溜息を吐く日吉が近づいた、途端。 「ひ、日吉っ!あ、うえ、い、いや!なんていうの、とりあえずあたしに神の啓示が降りたから・・・とりあえず襲っていい!?」 「落ち着け」 ビシっとチョップをされても何故か嬉しそうなに、日吉以外の部員全員が思った。 (わ、わかりやすー・・・!) 可愛いか?といわれればNOと答える。不細工か?といわれればNOと答える。 太っているか?といわれれば・・・NOと答える。細いか?といわれればNOと答える。 日吉若に恋する女。 それがこの氷帝学園中等部硬式庭球部のマネージャーのである。 |