「ですすすすすすす」 ふ、ふぉおお、こ、これが俗にいう異世界トリップってやつですか!? 「(すすすすすすす?)な」 さらりと、鵺があたしの名前を呼んだ。 わーわーわー!いや、なんていうか。 実際近くで聞くとエロボイスだね!鵺!! 「近くで行き倒れてたからつれてきたんだけど」 内心の叫びなんて知らないで(いや、知られたら困るんだけどね)、鵺がふむと考え出した。 そうして、どんどん頭が冷静になっていった。 異世界トリップって、ことは、家族はどうなるんだろう。 学校は?友達は? 不安で不安で仕方が無い。 確かに異世界トリップして楽しそうだなぁとは思ったけど、自分がするんだったら違う。 いやだなぁとか、いろいろなことを思いながら、それでも気に入っていたあたしの毎日。 「送ってくけど、家どこだ」 考え事をしていたあたしに鵺がポンポンと肩を叩いていってくれた。 「え、あ、大丈夫。一人で帰れるから!」 多分。 大丈夫であってほしいって言う考えが、頭の中に浮かんだ。 そりゃ、鵺は大好きですよ、うん。 でも、それとこれとは別問題っていうか、なんていうか。 「いや、でも」 「大丈夫!大丈夫!」 ・・・だと、思う。 ほら、よく異世界トリップとかでもあるじゃない。 家も友達もそのままで、世界にそれが入り込む感じのってさ。 きっと、それだよ。 「そうか・・・?」 ちょっと不安そうにしてる鵺に頷いて、あたしはおちてたといわれたあたしの荷物を掴んだ。 ほら、荷物もあるし。 空から落ちてきたとか、マンホールに落ちたとか、そんなんじゃないんだから、大丈夫。 「ありがとうございました」 ごめんね、迷惑おかけして。 そう言うと、鵺は別にいいけどよ、と言ってくれた。 ああ、いい子だなぁ・・・。 「それじゃあ」 手を振って歩き出した。 大丈夫、きっとあたしは家に帰れる。 お金だってあるし、交通の便だってあるし。 大丈夫、きっときっと、大丈夫。 |