「あ、」 息を呑んだ。 意外と家に近い場所でフラフラと歩いていけば、そこにあったのは、家なんかじゃなかった。 「公園だ」 ちょっと古い遊具に遊ぶ小さな子ども達。 住所を確かめても、ここは確かにあたしの家があったところ、で。 「無い」 あたしの家がない。 体中から血の気が引いて、あたしは立ってられなくなった。 気持ち、悪い。 大丈夫だ、帰れるなんて陽気に思ってた。 でも、違う。 家が無くて・・・あたしの帰る場所がなくなってた。 「どうしよう」 胸のあたりがギューって締め付けられるみたいに苦しくて、冷や汗がタラリと流れた。 怖い、怖い怖い怖い怖い・・・っ! 世界からあたしだけが切り離されたみたいに声が聞こえなくって、音もしなくって。 ぐわんぐわんと頭が揺れた。 苦しい、きもちわるい苦しいきもちわるい気持ち悪いきもちわるいっ! お願いだから夢ならこの瞬間覚めてっ! あたし、望んだわけじゃないじゃない。 夢小説に出てくるヒロインみたいに、この世界に行きたいなぁって望んでたわけじゃないのに! 確かに、いけたら楽しそうだなぁって思ったことはある。 でも、でも、あの世界を捨ててまで行こうなんて思ったこともないのにっ! フラフラ歩いて、何とか公園のベンチに座った。 どうして、どうしてあたしはこの世界に来てしまったの。 突然説明も無しに放り込むだなんて酷すぎるっ! 神様だろうが仏様だろうが夢によく出てくるオリジナルキャラだって構わない。 どうかこの現状を説明してよ!! 「っ、なんでぇ?」 怖くて怖くて仕方が無かった。 家も家族も友達もいないんだ、調べきれてないけど、居ないって何故かそう思った。 あたしは、たった一人知らない場所に置き去りにされたんだ。 どうしてあたしはこの世界に来てしまったんだろう。 道路沿いの公園から、たくさんの車が見えた。 ゆっくりと走るおじいさんがのる乗用車、ちょっと飛ばし気味のバイク、やけに威圧感を持つ大きなトラック。 ――ああ、そっか。 「あたし、死んじゃったんだ」 |