涙だってもう流れて流れて、何もなくなっちゃって。


あたしはボンヤリと公園のベンチに座ってた。
ああ、そうだよなぁ。

周りはすごく静かで、車の通る音くらいしかしなくなった。


あたし、トラックに轢かれちゃったんだ。


事故って新聞とかではよく読むけど、本当にそんな目にあうなんて初めてだなぁって思う。
いや、滅多に合うもんじゃないと思うけど。



夕暮れで真っ赤な公園が、黒に侵食されていって、いつのまにか空に星が出ていた。


「帰りたい」

もとの世界に、帰りたい。
死んだら、皆こうなるのかなぁって思ったけど、多分違うと思う。

なら、どうしてあたしだけ。
この世界に来てしまったんだろう。

あたしだけ、たった一人。




「――お姉ちゃん?」
ふと、真っ暗闇の中で声が聞こえた。

振り返ってみると、小さな男の子。
確か、あの鵺がいたところで見た子どもだと思う。
どうして、こんなところにいるんだろう。


「えっと、」
「僕コウだよ」

「コウ、君」
白いマントみたいなのを着てたから、多分漫画の中であった、えっと超夢魔?だったと思う、それをしてきたのかな。


お姉ちゃん、お家に帰ったんじゃなかったの?」
ぎゅっとコウ君が手を握ってくれた(あったか、い)。


そうしたら、何故か全部出たと思った涙がまた流れてきた(そうか、人間ってほとんどは水だもんね)。


「帰りたい、なぁ」

時々退屈だった普通の日常。


ゲームとかではよく見るけど、今ならよく分かる。
この世界にあたしを知っているのは、あたし以外だれも居ない、って本当に。



お姉ちゃん、帰るお家ないの?鵺に言ったら一緒に住ませてもらえるよ!」
そう名案みたいに言うコウ君に首を振った。


「ううん、大丈夫」
ここにはたった一人、だけど、コウ君みたいな小さな子に心配かけるなんてしちゃいけない。
確かこの世界には色々不良なライダーとか一杯いて不安だけど、でも迷惑なんてかけられない。



「警察に行ってみるから大丈夫!」


「け、警察は駄目だよっ!!!」



ガシっと思いっきり足を掴まれた。
え・・・。





ココは誰もあたしの無い世界



( 誰の中にもあたしという存在が欠片もない世界の恐ろしさ )