突然変なこと言って泣き出したあたしを鵺君は問い詰めるでもなく、じっと泣き止むまで待ってくれた。 いい奴だ、鵺・・・。 「えー・・・で、家が無いっていうのは、何でま」 「ねぇ、鵺!お姉ちゃんも一緒に連れて行こうよ!」 足元でコウ君が叫んだ。 「あ?え、あー・・・」 コウ君の言葉に、鵺が困ったように呟いた。 まぁ、確かに一人、しかももう子どもじゃないのが増えるっていうのはキツイだろうし。 「いや、大丈夫だよ、うん」 「ダメだよ!ゴム弾で撃たれちゃう!」 だから撃たれないから、ナナちゃん。 今この世界の警察事情って言うのがどうなってるのかしらないけど、多分普通に生活安全課とか少年課はあると思う。 自分から警察に行ったら撃たれることとかもないよ、きっと。 お姉ちゃんが死んじゃうー!と泣きついてくるコウ君とナナちゃん達を宥めていると、鵺が大きく溜息を吐いた。 「ホームのお約束その1!」 ビシっと鵺が指を一本立てた。 いや、お約束って、すごく可愛いんだけど・・・。 「困ってる人は助けましょう!鵺大好きっ!!」 ナナちゃんが叫んで、鵺に思いっきり抱きついた。 すると鵺がナナちゃんに笑って、それからあたしに手を差し出した。 「えーっと・・・鵺君?」 「鵺でいい。ホームのお約束その1、困ってる人は助けましょう、だ。第一俺がここで梓を置いて帰ったら、ガキ共の教育に悪影響だし、何より俺がいやなんだよ」 そう笑ってくれたけど、あたしは俯いた。 「・・・お姉ちゃん、ナナ達と一緒にいるのいや?」 不安そうにナナちゃんが首をかしげたけど、それに首を振って否定した。 確かに、一緒にくらせたらすごく楽しいと思う。 でも、あたし。 「あたし、死んでるの」 「・・・・・・幽霊?」 「ちょっと、違うかな」 実体あるし、足あるし、心臓ドクドク動いてるし、頬抓ったら痛いし、多分きっとあたしは生きている。 近くの道路にブォーっと大きな音を立てるトラックが走り抜けた。 「あたしはトラックに轢かれて死んで、この世界にきたの」 「この、世界?」 鵺が首を傾げた。 「異世界っていうのかな。死んだあたしは何がどうなったのか知らないけど、ここに飛んできたんだ」 どんどん頭の中に記憶が蘇ってきた。 迫ってくるトラック、動けなくなるあたし、そうして大きく体が空を飛んで。 あたしは、あの日初めて空を飛んだ。 「周りの景色も全然見えなくなって、一本筋みたいな上をあたしは飛んで、目覚めたらこの世界にいて」 たった一人、この世界には誰もいなかった。 「頑張ったな」 ポンと頭を撫でてくれた鵺に、あたしは思わず飛びついた。 |