「あー!お姉ちゃんと鵺が一緒にねてるー!!」


その大きな声で、あたしは目を覚ました。
目の前には鵺のドアップがあって、声に反応したのか眉間に皺が寄っていた。


「鵺がお姉ちゃん引き込んでるー!」
お姉ちゃん大丈夫ー?」

ああ、そうか・・・忘れてた。


「・・・鵺、鵺、起きて・・・。ごめん、寝過ごした・・・」
ガックリとあたしは額に手を当てて項垂れた。
二人で寝るって、こういうことになるんだ・・・・・・。


「ん・・・あ?何でお前、ら」
「鵺が狼だー!」
お姉ちゃんの優しさに付け込んでんだぜ!」

ああ、もう皆芸達者だね、本当。
きゃーきゃー騒いでいる皆に、鵺はやっと頭が覚醒したようで顔を真っ赤にした。

「あ、あほかぁあああああああ!!!」
お前らとっとと顔洗って来いっ!!

そう怒られて、皆は笑いながら走って逃げていった。


「ご、ごめん鵺・・・この可能性をすっぱり忘れてて」
「別にのせいじゃねぇよ。俺も忘れてたし」
な?と頭を撫でられて、あたしは頷いた。あー・・・本当に優しいな、鵺。




「で。これからのことなんだけど」
あたしが食事が始まる前に言うと、鵺はきょとんと目を瞠る。

「働けるところ見つけて、それから―――」
部屋を探してすぐ出て行くから、という言葉を言おうとして、あたしは思わず口を噤んだ。


ちょっと待て、戸籍・・・あるの?

あたしはあの日死んだ、確実に死んだ・・・って言っても死体は見てないけど、死んだと思う。
それから新しい世界に来て、家も無いし、ましてや捜索願が出てるなんて思えない。

普通働くのって戸籍がないと・・・無理じゃない?


「・・・こ、戸籍が無くても働ける場所ってどこですか・・・?」

「闇家業にでも手染める気かよっ!」
ふざけんな、と言わんばかりの形相で怒られた。



「何でそんな突然言い出すんだよ」
「だって、早く出て行かないと、って思って・・・」
最後の言葉は小さくなってしまった。


「何で?どうしてお姉ちゃん出て行くの?」
ぎゅっと小さな手があたしの手を縋りつくように握った。

「だって、だって迷惑かけちゃいけないから・・・」
あたし死んじゃってるし、戸籍無いし、頭悪いし、みんなの家族でも親戚でもないのに。
とりあえず思いつくままにここに居られない理由をあげた。

こんなに優しくしてくれたのに、それだけでもありがたいって思わなくちゃいけないのに、なのに。



「じゃあ、お姉ちゃんが鵺と結婚すればいいんだよ」
これで解決〜!とナナちゃんが誇らしげに言った。





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( かといって別に嫁ぎ先を探してたってわけじゃなくってね、あの・・・おーい )