あたしが好きになった人は、敵でした。 神様が居なかったから、あたしは好きになっても良い人とめぐり合えずに悪魔の囁きに負けてしまった。 あの時のあたしに会えるなら、心臓を刺してでも止めてやりたい。 「どうして、敵なのかなぁ」 せめて、無所属のライダーなら良かった。 流石に眠りの森に引っ張るなんてことはしなくても、きっとあの人が好きとあたしは普通に言えた。 なのに、何でよりにもよって。 「ジェネシス・・・か」 林檎ちゃんが好きな・・・たしか空の王候補って言われてる南樹君もジェネシスに関連してるんだっけ。 ああでも、林檎ちゃんが好きだったのは樹君がA・Tをはじめる前だったんだもんね。 だから、ジェネシスが敵だってわかっていながら恋をしてしまったあたしとは、違う。 「裏切りたくなんて・・・ない」 林檎ちゃんだって蜜柑ちゃんだって白梅ちゃんだって。 一緒に大きなフルーツパフェを食べに行ったりした、遊園地に遊びに行った、泊まって一晩中こそこそと話をしたりなんてして。 大切で大切で、裏切りたくなんてない。 ほら、答えは出てる。 裏切りたくないなら、答えはたった一つだ。たった一つでいい。 あたしが想いを諦めること。 好きだってことは無かったことにして何時もと同じように皆の敵への嫌味に花を咲かせたりなんてして、そうしていつか、戦うだけ。 躊躇わないで。 相手が皆を傷つけようとしたら護って、傷つけられる前に倒さなくちゃ。 あの人、を。 「っ・・・!」 がくん、と足が崩れた。膝がカタカタと笑ってて立てなかった。 怯え、てる? 手がどうしようもないくらいに震えてて、ざぁっと頭の中の血が流れて体の方に落ちていく気がした。 この世界に生易しさなんてないものは、知っているでしょう? 心を捨てなくちゃ、いけないでしょう? あたしは皆を裏切りたくないからこの気持ちは知らない事にしてそうしていつか戦う日が来たら迷うことなく彼を、倒す 倒す、んだ。誇りにかけても。 「・・・はっ、はっ・・・!」 違う違う違う違う違う。恐れてなんか無い、怖くなんてない、怯えてない――迷ってなんてない。 あたしは皆を護るために敵を倒すだけなんだから。そうして皆を護るんだから。 嫌なんて、思ってないっ!! 気づいた時には外は雨が降ってた。 あたしの秘密基地。以外に入りやすいところにあるのにA・Tには全然使えないから誰も来なくて雨も防げる。 通り雨みたいだから上がったら帰ろう。 「っだー、いきなり雨なんてアリかよっ」 神様。どうして貴方は居ないんでしょうか。どうして悪魔をここまで蔓延らせるのでしょうか。 (どうか、答えて) 「・・・雷の王・・・鵺」 気持ち悪いほどに心臓が大きく音を立てた。 |