あたしを生かせながら苦しめるのが悪魔だというのなら、きっと神様はあたしを殺すに違いない。
だって、こんなにも心臓が痛い。


「落ち着けよ、


あ、れ?
何でこんなにも暖かいんだろう。
おかしい、おかしい、どうしてこんなに声が近いの?こんなに熱が近いの?冷たいのに、熱い。


「なっ、何してっ!」

抱きしめられてる――!?

力の差なのかもしれないけど足掻いても足掻いても腕が外れない。
どうして!?何であたしは抱きしめられてるのっ!?


「そんな泣きそうな顔でエネミーなんて言うな。別に戦以外で戦いたいわけじゃねぇだろ?」
「分かったような口を聞くなっ!!」
必死で腕で胸を押して離れようとするのに、無理。離れない。

駄目、駄目、駄目っ!!
何でそんなに優しい声で言うの?何でそんなに優しく抱きしめてくるの?何でそんなに優しい目をするのっ!?
(もっと好きになっちゃう)


「別に個人で何かあったわけじゃねぇだろうが。別に俺はと戦いたいわけじゃ」

「煩いっ!!」

そんなの、あたしだって一緒だよっ!


「それでもあんたはあたしの敵なのっ!眠りの森とジェネシスの確執を知らないわけじゃないでしょっ!?」

裏切らない。
裏切らないよ、絶対。


「まさか、あたしがどんな存在か・・・しらないわけがないでしょ?」

瞳に刻まれてる十字架。あたしが運命の子である証。
そう、だって鵺だって同じ存在なんだから。


「・・・重力子、か」

知らないなんて言わせない、だからこの中で生きていることを分かってないなんて言わせない。
あたしと貴方は同じ存在だった。

だけど、支持する場所が違う。だから一生重なることなんてない。



そっと緩まった腕に急いで後ろに下がった。
足が縺れて、何度も転びそうになる。


「何のつもりか知らないけど、あたしを懐柔しようとしたって無駄だから」
「別にそんなつもりじゃねぇよ」

分かってる。知ってるよ。あの日から、ずっと見てきたんだから。
鵺はそんな人じゃないって知ってた(だから禁忌だと知っていても恋焦がれてしまった)。


「じゃあ何?同情?同じ存在だからって分かってるとでも言うつもり?苦しみは同じだとかふざけたこと言うつもり?」

違う違う。鵺はそんな人じゃない。



「貴方は、あたしのエネミー!」

戦いたくなんてない。


「貴方は林檎ちゃんや蜜柑ちゃんや白梅ちゃんたちを脅かす敵。あたしを脅かす敵。それだけでいいの!」

苦しい苦しい。どうして、こうなっちゃったのかなぁ。


「お願いだから・・・これ以上好きにさせないで


空はまだ、泣いていた。





泣いていた、空



( 大粒の涙を流して、まるであたしを拒むように泣き続ける )