「鵺ー?」

ふと気づくと、ナナが俺の顔を覗き込んできてた。
やべ、ボーっとしてたか。


「わり。どした?」
「うん。コウちゃんがね、お腹すいたって」
「さっきおやつ食べたばっかだろ?」
仕方がねぇな、といって立ち上がった。


外は小雨。



―――「エネミーは、倒す」



昨日のが頭から離れなかった。
エネミーっつーわりにすっげぇ泣きそうな顔して、辛そうな顔してて。

気づいたら、抱きしめてた。



―――「貴方は林檎ちゃんや蜜柑ちゃんや白梅ちゃんたちを脅かす敵。あたしを脅かす敵。それだけでいいの!」



確かに眠りの森とジェネシスは敵だ。
お互いの仲間と居る時にあったら、俺はあいつと戦うこともあるかもしれねぇ。

けど、何で。


「あんなに辛そうだったんだ・・・?」

足はガタガタ震えてて、今にも崩れ落ちそうだった。
必死に虚勢を張って無理をしてるようにしか見えなかった。

まるで、自分に言い聞かせてるみてぇに。



「鵺ー!」
「おう、今行く!」
俺はこいつらが普通の生活が出来るようにするために、ジェネシスにつく。
そんなんずっと前から、王になる前から決めてたことだ。

だから、あいつと敵対することは別におかしいことじゃねぇ。なんてったって、あいつは眠りの森なんだから。

なのになんで、


「戦いたくねぇみたいな顔で・・・」

頭から離れねぇ。
凄く、泣きそうな顔だった。


「鵺、あのねー。今日はオムライスがいいな」
「そうだな、昨日は魚だったし。いいぜ」

駄目だ。こんなんじゃあいつらと戦う時に鈍るかもしれねぇ。

俺はこいつらを護ってやる。
重力子のこいつらが普通の生活を出来るようにする、それがあいつとの契約だからだ。

だから、俺はジェネシスに従う。


「鵺、鵺ー!ほらほら、早くー!」
遠くからチエの呼ぶ声が聞こえる。コウもナナも。
「おう、わかってるっつーの!」


こいつらに普通の生活をさせてやりたい。
そのためにも、護ってやらねぇと。



―――「お願いだから・・・」



護って、やらねぇと。





護りたい



( その気持ちはきっと同じなはずなのに、な )