「・・・え」 とうとう、来たんだ。この日が。 目の前で辛そうな顔をしてる林檎ちゃんが、あたしが理解できてなかったと思ったのかもう一度言った。 「ジェネシスとの抗争が始まったの」 ゆるりと、その目の中には十字架が映ってた。 微妙な関係を保っていたこの二つの確執は、第三勢力である彼らによって一気に崩された。 そうして、ついに火蓋が落ちた。 「そっ、か・・・」 「うん。あの、それでね」 俯くと林檎ちゃんの躊躇うような声が聞こえて、顔を上げた。 「ちゃんは、どうする?」 頭を殴られたような気分になった。 今更置いていくつもりなの!?あたしの答えなんて分かってたはずじゃない!! 林檎ちゃんが知ってるわけじゃないんだから、あたしが裏切ったなんてことわかるわけがない。 思わず言い返そうとして林檎ちゃんの顔を見て、口を噤んだ。 違う。 林檎ちゃんは勿論付いてきてくれると知ってるから、知ってるけど、でもあたしを心配してくれてるんだ。 だってもう、笑い事じゃすまないんだから。 命を落とすことだってありえる。 あたしだって重力子なのに、それでも林檎ちゃん達は優しすぎて、あたしを護ろうとしてくれてる。 ああ、もう、手なんて離せるわけないじゃない。 「一緒に戦うよ」 答えは分かってたけどそれでも不安そうな顔をしてた林檎ちゃんが嬉しそうに笑って、それから辛そうに顔を歪めた。 「ごめんね・・・ごめんね、ちゃん」 「馬鹿。林檎ちゃんのせいじゃないよ。あたしが決めたの。傍にいたいって、あたしが決めたんだよ」 護りたい。 林檎ちゃんを裏切りたくない、皆を護りたい、あたしのこの居場所を護りたい。 手を離すなんて、ありえない。 「一緒に戦おう。あたしじゃあんまり力にならないかもしれないけど、それでも頑張って戦うから」 あたしたちの目標のために。 必ず、必ず勝ってみせる。 「・・・うん。頑張ろう、ちゃん」 必ず、勝つんだ。 「あのね、お願いがあるんだけど」 「え、何?」 きょとんと顔を上げた林檎ちゃんに、あたしは頷いた。 「雷の王、鵺はあたしに任せてくれないかな」 「え?」 「あたしに、倒させて」 この気持ちは絶対一生言わない。だって裏切りたくない。 でも、誰かに倒されてる姿なんて見たくない。知らない間に死んでるのなんて見たくない。 「皆にもそう言ってくれない?」 なら、あたしが倒す。 「雷の王、鵺は・・・あたしの獲物だって」 |