深呼吸。落ち着け、落ち着け。

あたしは眠りの森の。林檎ちゃんだってあたしの力を評価してくれてる。
勝てないはずがない。

落ち着け、落ち着け落ち着け落ち着け。


「心は、捨てなくちゃ」

あたしは皆を護るんだ。




、見つけたぜ!雷の王だ!」
「りょーっかい、ありがと!」
チームメイトの一人がかけてくれた声にあたしは頷いた。


林檎ちゃんがすぐに雷の王はあたしの標的だっていうのを伝えてくれたから、すぐに教えてくれるようになった。
って、そんなこと考えてる場合じゃない。




「・・・

「軽々しく名前を呼ばないで、って言ったでしょ」

呼ばれるたびに心臓の音が煩くて仕方が無かった。


鵺は強い。

何せ雷の王だし、彼の戦い方じゃ開けた場所ほど不利だ。
かといって狭い場所で有利になるわけでもない。

本当、嫌な相手。



「貴方を、全力を持って排除する」


鵺の後ろに月が見える。

大丈夫、怖くない怖くない怖くない。あたしは怯えてなんかいない。
あたしは鵺を倒せる。林檎ちゃんたちを護るために鵺を倒すんだ。

倒してみせる。


「・・・こいよ」

「言われなくてもっ!!」
思いっきり地面を蹴った。

勝つためには鵺がワイヤーを張り切る前に懐に飛び込まなくちゃいけない。


「っ!」

その瞬間。

足をとられて放り投げられる。急いで空中で体制を整えて地面に降りた瞬間には、目の前に鵺がいる。


やられるっ、

「もんかぁっ!!」


身を屈めて迫ってきた鵺を下から蹴り上げた。

「っ、らぁあ!」


やだよ。もう・・・。戦いたくなんてないよ。
どうしてこんなに、好きになっちゃったんだろ。


「このっ!」

どんどん戦いながら場所が移動していて。そうしてあの場所に来ていた。

目の前から倒されて圧し掛かられて、腕を掴まれる。

「あ」


動けない。





近いほどに遠く



( 負けた理由はわかってる。あたしのあきらめ切れない恋心のせいだってわかってる )