風が、駆け抜ける。


空は、いつのまにか真っ暗で。
足元で光るネオンに、あたしは目をゆっくりと閉じた。




「ありがと、鵺」
スピさんに連れてこられたから、帰り道分からなくなってしまった。
当人のスピさんは、いつのまにかどこかに行ってるし。
そんなわけで、鵺に送ってもらった。
「ああ・・・」

あたしが、調律者になる、と宣言してから、鵺の顔は浮かない。
そんなに、あたしが調律者に、力を持つのが、駄目なの?


「鵺・・・あたし、決めたから」

頑固なのは知ってるでしょ?
そう言うと、鵺は勢いよくあたしの手を掴んだ。

「俺は絶対に反対だ!」

夜だっていうのに、声を荒らげた鵺に、あたしは少し驚いた。

「・・・なんで?どうして、駄目なの?」


あたし、鵺の力になりたいだけなんだよ?
それなのに、何で、そんなに反対するの?


「知ってるだろうけど、暴風族の世界は危険なんだよ。のことを心配して言ってんだろ!?」
「そ、りゃ・・・知ってるけど」

暴風族の事件とか、A・Tの事件とか、たくさん、危険なことがあるのは知ってる。
鵺が履いてるから、暴風族で有名だから。
いつだって、事件に巻き込まれてないかって、気にしてた。


「だったら!」

「でも!」


鵺の言葉に続くように、いつのまにか大声になった声を張り上げてた。
「これは、あたしの問題だよ!それに、あたしだって・・・あたし、だって・・・」
ギリ、と奥歯を噛み締めた。

鵺の言葉が、あたしを思ってくれて言ってるのは分かってる。
あたしのこと、心配してくれてるって、よく分かってるよ。
ずっと、一緒にいて、鵺のことを見てたんだから。


「鵺の馬鹿!絶対に調律なんかしてやらないんだから!スピさんの調律者になってやる!!」


「おい!ちょ、待て!!!最後のだけは、絶対に駄目だ!!!」




鵺の言葉が聞こえないように、あたしは家に駆け込んだ。
玄関のドアにもたれて、荒くなった息を整える。
「鵺の、バカ・・・」
ズリ、ズリ、とそのまま蹲る。

バカ、バカ、鵺のバカ。

「あたしだって、鵺のこと心配なんだよ・・・?」


だからその力で、君を助けられれば、と思ったのに。





あたしのココロ、きみ知らず



( だって、君ばっかり苦しむなんて耐えられない! )