一際、騒がしい部屋で、あたしは苦笑して扉を叩いた。
「すみません、お話中に。咢君いますか?」
足に、重度の筋肉疲労が来てるんだから、そりゃいるだろうけど、一応、部屋の中に向かっていった。


「この間の清純派美少女!!」


突然、頭からカラスを飛ばして、黒い髪の男の人が叫んだ。

清純派、美少女・・・って、あたしのことですか?ひょっとして・・・。
あは、あはは・・・やだなーそんな、あっはっは。



ちょっと、嬉しくなりながらも、とりあえず部屋の中に入る。
「えっと、咢君の治療に来たんですけど・・・」
「ああ・・・。ファック!てめぇらうるせぇ!!!」
叫んではしゃいでいた彼らに、咢君が怒鳴るけど、一切聞く耳を持たないように騒がしい。

と、いうか、何なんだろう、このテンション。
「とりあえず、今日はマッサージですから、足出してください」
勝手にめくりますねーといって、咢君のズボンをめくる。
ベットに座って、ぎゅぎゅと体重をかけるようにマッサージをしていると、途端、声がやんだ。



「・・・?―――ってきゃあああ!!!!」



ス、ス、スカート覗かれたぁあああ!!!
なんか太った坊主に近い髪型の人が、ベットの下から顔を出していた。
「ぐふぉあ!!」


蹴った。

思いっきり蹴った。


「ああ!すみません!大丈夫ですか!?」
ど、どうしよう!思いっきり蹴っちゃったし、なんかいい音したよ!?

「ファック、あんなの別にどうでもいい」
「どうでもいいって、お、お友達じゃないんですか?」
あの、動きませんけど!

「ファック!!だれがあんなのと友達だボケ!!さっさと治療続けやがれ!!」


道にするぞ!!と怒鳴る咢君に、仕方がなく、あたしは治療に戻った。

・・・大丈夫かなぁ、さっきの人。




「・・・鵺」
咢君の治療から帰ると、家のリビングに鵺がいた。

・・・最近牙の治療に通ってるってのは、本当か?」
無表情だけど、普通に話し掛けてくる鵺に、少しむっとした。
「そうだけど・・・鵺には関係ないでしょ!?」
いつだって、何にも言ってくれないし、何も話してくれないくせに。


こんなときばっかり、そうやって。


「関係あるに決まってるだろ!」

「っ!・・・ぬ、え・・・?」

強く、腕を掴まれた。

怖い。
鵺が知らない人みたいで、怖い。


「お前は、何も分かってねぇだろ!」





ねぇ、君を護りたいだけなんだ



( どうか、どうか、それを許してよ、お願いだからさ )