息を吸って、深く吐く。

体の中を循環させるように、その緊張したときの癖になった行動は、少しだけ、あたしを落ち着かせてくれた。




脱いだ服の背中に、装置がつけられる。
痛そう、と思ったけど、なんだかあんまり痛くなかった。
それよりも、今バクバクと動く心臓が、痛く叫んでるような気がした。

大丈夫。
だって、あたしは独りじゃない。

ちらり、と椅子のような装置の上で裸で寝かされている鵺の顔を見る。
その顔はさっきの苦しみなんて感じさせないような顔だった。
鵺はあたしの身体を見ないように、ゆっくりと視線を動かして、あたしの眼を見てくれる。


もう一度、息を吸った。
く、とその息を口に溜めて、そしてまた、大きく吐き出した。


「・・・
もう一度、深呼吸をしようとしたあたしの手を、鵺が握る。

「―――ぐだぐだ変なこと考えんな。・・・俺は、信頼してる」
に、と口端を吊り上げて笑う鵺に、一つ、一つ、あたしを縛っていた何が解けていくような気がした。
鵺が、あたしを信じてくれてる。

素人だってことは、知ってるくせに、いつもの子どもっぽくて、生意気そうな笑みで。
大丈夫、うん、大丈夫・・・何が大丈夫か、何て、あたしにも分からないけど、大丈夫。


鵺が傍にいる。

だから、絶対に。




「・・・いきます」


あたしの声に、静かな部屋は、さらに静かになった。


そっと、鵺の足に手を触れる。
そういえば、こんなに近くで触れるのって、初めてだな・・・。
ずっとずっと、傍にいたのに。

「093DSKH10」
一つ、一つ、確かめるように、小さな脳みそをフル回転させる。


よし、思い出せ、思い出せ、あたし!
あの、巻上先生が認めたんだ!やってやれないことはない!!
というか、やってみせる!




「・・・・以上、です」
そっと、鵺から手を離して、息を吸った。
うん、これで、全部終了。


「―――で?行くんでしょ?鵺」
にやり、といつもの調子で、まるで馬鹿をやりあうときのように、笑った。

「当たり前だろ?
ごん、と握りこぶしを当てて、にや、と笑う。
「反撃、開始といきますか」





反撃開始、容赦は致しません!



( 信じてる、その言葉が何よりも強い絆になるよ )