「おっはよ〜鵺」
思うが侭に鵺の背中に飛びついた。
目の前の触覚が素晴らしい髪形の鵺は、あたしが一番大好きな人。
「おう、はよ、

そんなあたしと鵺は目下恋愛中です!!!


なーんて言えれば、いいんだけどなぁ、と溜息を吐いた。
好き好き言ってるけど、鵺はそれに付き合ってくれてるっていうのも知ってる。
それはまだ、あたしが子どもだから。


「なにたそがれてるんだい?ちゃん」
「うぬぅあ!!」

び、びびびびったぁあ!!
スピさんのスタッフ休憩室に通されて、スタッフの人からもらったジュースを飲んでたら、突然、スピさんの顔がまん前にきた。
す、スピさん!顔美形なんだから、突然は止めてって!

「相変わらず元気だね、ちゃん」

「スピさんのせいでしょ」

むすっとした顔で言うと、スピさんは苦笑する。
・・・なんか、大人の余裕〜ってやつみたいで、ムカツク!


「あ、それよりも・・・休憩にはいったの?」
「そう。ほら」
と出されたのは、スピさんの、玉璽の無いA・T。
それを見て、あたしもA・Tに履き替えた。




「どっせいぃ!!!」
思いっきり壁に向かって回って、ぐるんと飛ぶ。
何ていうのかは忘れたけど、兎に角トリックの練習中。


「うん、上手いよ、ちゃん」

「んー・・・でも、まだ微妙にタイミングが合わないんだよねぇ・・・」


そろそろスピさんの休憩が終わるから、あたしは傍に置いておいたランドセルを背負った。

「ごめんね、スピさん。大切な休憩なのに、つき合わせて」
「構わないよ。ちゃんの頼みだからね」

ウィンクをして言うスピさんは、凄く様になってる。
さすが美形・・・!


「それよりも、鵺君に教わればいいのに」
何時だって教えてくれるだろう?
というスピさんに、あたしは首を振った。


「鵺じゃだめなの。――――それよりも!こうやって練習してること、鵺に言っちゃだめだからね!絶対にダメだからね!?」


勿論、と頷くスピさんに手を振って、あたしはホームに向かって走り出した。





追いつきたくて走り出したこの胸は



( 君にいくつ隠し事をしたら、君の隣に立つことが出来るのかな? )