「た-――」
『鵺君はちゃんのこと、どう思ってるの?』


ただいまーと言おうとしたら、リビングへと続く扉の向こうで、シムカちゃんの声がした。

シムカちゃんは、凄くスタイルのいい、可愛いお姉さん。
鵺も多分、あんな人が好みなんだろうなぁ・・・と思うと、かなりへこんでくる。
あ、それよりも!
そういえば、鵺とあたしについて、話してるみたい・・・だけど。

『どうって・・・』

戸惑うような鵺の声が聞こえた。
うるさいほど鳴る胸を抑えて、あたしは必死に気配を消して、鵺とシムカちゃんの話を聞いていた。

『だって、あんなに毎日好きって言われてるんでしょ〜?結構その気なんじゃないの〜?』

ドクン、と胸が一層跳ねた。

『・・・の世界はまだ狭ぇから、身近で、年上な俺にそう思ってるだけだ。中学、高校になれば変わんだろ』
『じゃあ、ちゃんの気持ち、信じてあげてないの?』
『いや、そうじゃなくて。はまだ小学4年生だぜ?気持ちもすぐ変わるっての』

涙が。
零れそうになって、必死であたしは飲み込んだ。

知ってたはずじゃない。
そうだよ、だって。
好き好きっていうあたしに、付き合ってくれてるっていうのも、知ってる。

知ってるんだから。


「たっだいまー!!!」
無理矢理、元気な大声を出して、あたしはバタバタと音を立てて、リビングに飛び込んだ。

「あれ?シムカちゃん。いらっしゃい」
「あ、うん・・・こんにちは」
はは、と苦笑いするシムカちゃんに笑って、あたしは冷蔵庫を開けた。



鵺のあたしを呼ぶ声がするけど、無視して、あたしはジュースを飲み込んだ。
「あー、疲れた。そういえば、コウちゃんが足のサイズが合わない〜って言ってたよ?」
「え、あ、そうか、わかった・・・じゃなくて、!」
「あ!やっばーい、宿題出てたんだ。んじゃ、後でね、鵺、シムカちゃん!」
!」

叫ぶ鵺の声に振り返らないように、必死で走った。


「・・・聞かれ、てたね・・・ごめんね、鵺君」
「いや、別にシムカのせいじゃねぇ・・・」




一人、部屋のベットにこもった。
二段ベットのカーテンを閉めて、マクラを抱きしめた。

「結構・・・言葉にされると、辛いなぁ・・・」

あたしの世界って、意外と狭くないんだよ?
それでも、あたし、鵺が好きなのにな・・・。


ぎゅ、と枕を抱きしめて、泣いた。





どうしたら信じてくれる?



( 本気だよ、本当なんだよ、ねぇ、あたし、あなたのことが、 )