「そしたら、今日の修行はこないなもんで終了しまひょか」
「はーい!ありがとうございました、ベンケイさん」
笑顔で終わりを告げるベンケイさんは、最初から最後まできれいだ。

あたしは、最後には、泥だらけのボロボロなのだけれど。



「うちは構やしまへんで?どないしろ、最近暇だったさかいに、ええ暇つぶしになりますわ」
「そうですか・・・?あ、そういえば、今日ヨシツネさんは?」
キョロキョロとあたりを見渡すけど、ヨシツネさんは一回も顔を出さなかった。
偶にチラチラ出してくれるのに。

「今日はちょっと用事があったみたいどす」
「あ、ベンケイさん大丈夫だったんですか?」
ベンケイさんも行かなきゃいけなかった、なんてことだったら大変。
そう思ってあたしが聞くと、ベンケイさんが首を振った。

「ゲーセンに付き合う趣味は、うちは無いんどす。・・・それよりも、ひとつに聞きたいことがあったんどすけど」
「はい?」
そうなのか、ヨシツネさんゲーセン好きだもんなぁ・・・と思ってると、突然聞かれて、あたしは首を傾げた。

何だろう、聞きたいことって。


「いい女になる。それはええんどすけど、どないしてA・Tの修行なんどす?」

キュルっと小さく音を鳴らして言うベンケイさんに、あたしは苦笑した。
というか、ああやっぱり聞かれちゃった、なんて思って。

「えっと・・・。守られちゃうから」
「?」


「鵺と一緒にいると、護られちゃうんです・・・あたし」

前もそうだった。
昔、って言っても、ちょっと前。

鵺の雷の玉璽を狙う人に攫われて、そのせいで、鵺の腕に怪我を負わせちゃったから。
気にしてない、なんて笑われたけど。


「それは、のせいやありまへんえ?」
「そう・・・だとは、思うんですけど」

だから、あたし、決めたんです!
「護られる存在にならないってっ!絶対、鵺にとって重たいものに、なりたくないんです!」

A・Tも・・・対等、とは行かなくても、一人でも戦えるほどの力を持って、それから、鵺に。
鵺に、


「目指せ!いい女っ!打倒鵺っ!!」
「倒してどないするんどすか・・・?」

ゴゴゴゴゴと燃え上がるあたしに、静かにベンケイさんの突っ込みが入った。

「う・・・」
「そないなことより、今日は昼からは暇どすさかい・・・別方面のいい女も、レクチャーしたります」
「ありがとう!ベンケイさん!」

さ、着替えてから、街に行きますえ?
笑顔で言ってくれたベンケイさんに頷いて、歩き出した。





追いつけるまで全速全身!



( 止まらないよ、絶対に追いついてやるんだからさ! )