が消えて、半年の月日が流れた。




「コウが誘拐されたぁ!?」

目の前で泣きじゃくるナナの、漸く聞き取れた言葉に、俺は変な叫び声を上げた。
しかも、何かとつけ狙って来る、チームの名前を聞いて、舌打ちをする。
全く、ガキを人質に取るなんて、自分から負けてるって言ってるようなもんじゃねぇか。


はぁと溜息を吐いて、A・Tを吐いた。

うちの子ども達に手を出したんだ。



「まさか、無事に帰れる、なんて思って無かっただろ?」

キュルキュルと鳴り響くワイヤーの音に、今更ながらにそいつ等が怯えたような顔をした。


ち、こんな程度で怯えるんなら、最初から刃向かってくるんじゃねぇよ。
小さく舌打ちをした。


流石に今日はチビ共は来させなかった。
ただでさえ、チビ共のまとめ役みたいなもんだったが抜けたせいで、色々と不安定だ。
コウのことで、また色々あって、大事になるといけねぇしな。


「ち、くしょっう!」
「能弁はどうでもいいから、さっさとコウを返せ・・・。それとも、俺の雷を食らうか?」
片足を上げて、パチパチと雷を起こす玉璽を見ると、そいつは案の定顔を青ざめる。

から一回も連絡来ることはねぇし(スピットには一回来たらしいがっ!)、イライラしっぱなしだ。
・・・が俺に、子ども見られてるから。

多分、の出て行った原因の一番は、俺とシムカの会話だ。


「ぬえ!」
自由になったコウが、俺のところへと走ってくる。
さっさと、おさらばするか。
「じゃ、これに懲りて、二度と変な気起こすなよ?」


でも、どうしようもねぇだろ!
俺は、をそんな風には見られない。

ずっとガキのころから一緒にいたは、俺にとっては妹で。
の世界はホームだけじゃないって言われた後も、俺の気持ちは。


「ぬえっ・・・!!!」
コウの裂かんばかりの叫び声が聞こえた。



「なっ・・・!」

油断してたっ!
後ろを振り向くと、そこには大きく岩を持ち上げて、今降ろそうとしているやつの姿が見える。

反射的にコウを抱きしめた。

玉璽っ・・・!




「注意力、散漫だよ」
小さな、少女の声がした。

「―――、ちゃん・・・?」
腕の中のコウの声が聞こえて、ドサリと岩を持ち上げていた男が倒れる。

夜、月明かりに照らされて映る、記憶より、いくらばかりか背の高い、それでも小さい少女。


・・・?」


フワリ、と動いた口元は、まるで別人のようだった。





光陰矢のごとし、なんて言うけど



( 時が流れるのは早いなんて言うけど、何かが足りない僕の時間は酷く緩慢なんだ )