ベンケイさんと、ヨシツネさんに背を押されるままに、A・Tを滑らせた。 目指すは駅。 走りこんで大分早くなったはずなのに、全然はやく感じなくて。 あのとき、逃げちゃったけど。 今度は、何か言えるような気がして、ええっと、何だっけ、「はやる気持ち」だったかな? それを、抑えられなくて、そのまま突っ走った。 東京行きの新幹線。 来た時とは逆に、凄くドキドキ胸が鳴った。 鵺は、あたしを見たら、なんていうんだろう。 何で、勝手にいなくなったんだ、って怒るのかな(凄かったって空さんから聞いたから)。 それとも、驚くのかな。 頬を染める、なんてことは、思ったりしないけど。 でも、成長したな、って思ってくれたらいいのに。 「コウちゃんが誘拐された!?」 教会にたどり着いたあたしを迎えたのは、鵺でも、みんなの笑顔でもなくて、ナナちゃんの泣き顔。 聞き出してみれば、コウちゃんが誘拐されて、それを鵺が助けに言ったらしい。 「落ち着いて、ナナちゃん。鵺なら大丈夫だって」 何ていっても、雷の王なんだから。 大丈夫だよ、と言うと、やっとナナちゃんが落ち着いてくれた。 「ちゃん・・・鵺とコーちゃん、大丈夫かなっ」 「大丈夫!だって、皆が待ってるんだから!」 ね?というと、ナナちゃんが、ゆっくり頷く。 「じゃあ、ちょっと帰りの遅い二人を迎えに行ってくるね!」 手を振って、笑顔で笑って、今日はたくさん使ってるA・Tで駆け出した。 他のチームとのいざこざが無いように(何ていっても夜だから)、色々技を使って、見えないように走り出す。 鵺、あたし、こんなことも出来るようになったよ。 技だって、スピードだって、全然違うんだから。 鵺。 あたしはもう、鵺に護られる立場じゃないよ。 夜の中を走るのは怖くない。 コウちゃんも、鵺も絶対に大丈夫(だって、強いから!)。 キュルキュルとワイヤーの音が聞こえた。 鵺のところに走りよるコウちゃん。 その後ろから、岩を振り下ろそうとしている男の人の姿が見えた。 「鵺っ!」 電柱の上から、体を回転させながら、飛び降りる。 「ぬえっ・・・!!!」 コウちゃんの叫び声が聞こえて、パチパチっと鵺の玉璽の音がした瞬間に、あたしはそのまま片足をその男の人の頭に落とした。 「注意力、散漫だよ」 ダメじゃん、鵺。 「・・・?」 |