こっそりと、あたしとショウは違和感のないように、観察できる場所で教室を見つめた。

ちなみに、鵺はまだ来てないみたい。


「ねー、・・・。休んだらいけないって」
「うるさい、ショウ!義務教育をこういう時に生かさなくてどう生かすの!」

「・・・(少なくとも、こう生かすべきじゃないと思うんだけどなぁ・・・)」


黙り込んだショウを放っておいて、あたしは教室を見つめた。
そろそろ時間は鵺の登校時間。

あの家出の時みたいに、鞄にA・T仕込んで普通に出かけたフリしてこっそりお出かけ作戦は上手くいって(詳しくは第一部参照)こうしてあたしは高校に潜入できた。
うんうん、さすがあたし。


「あ、鵺がきたよ」
突然、隣にいたショウが言った(何だかんだいいながら結局は協力してくれてる)。

「ぬ、」
え、の文字を言うことなく、あたしは言葉を失った。
決して、制服姿格好いいなぁ・・・っていう気持ちが入ってたわけじゃない!(ともいいきれない)

問題は、その鵺に近づく女の子。
あの口の形は「おはよー鵺」とかって言ってて、鵺はそれにちょっと笑って「はよ」とかって短く返してる。



「・・・、大丈夫?」
隣でショウに肩を叩かれるけど、言葉を返すなんて出来なかった。

・・・・・・・・・・・・・何、あの仲睦まじさっ!!
バキン、と手の中でシャープペン(メモを常備して観察してた)が折れたけど、あたしはずっと握り締めていた。

そりゃ、そりゃさぁ!
別に彼女ってわけじゃないし、好きって告白したけど、振られちゃってる身だけど。
それでずっと今まで諦められずにずっとアプローチしつづけてるのに。

一言くらい断ってくれたっていいじゃないっ!
ばかやろー!!と叫びたい気分だった。


女の子が鵺に話し掛けて、鵺の顔がちょっと赤く染まった。

痛い。


・・・?」


酷い。

あたしには、そんな顔してくれないのに。


いつまで経っても、どれだけ好きだって伝えても。
思いっきり下唇を噛み締めたら、ちょっとだけ血の味がした。

ショウが色々声をかけてくれるけど、答える余裕なんてこれっぽっちもなかった。
好きな子が出来たなら言ってくれればちゃんと諦められるのに。
隠れてコソコソ付き合うなんて、あたしを傷つけたくない、んだろうけど。


「鵺の馬鹿・・・っ!」
カチャリとA・Tを履いて、あたしはその場から離れた。
後ろで、ショウの声が聞こえたけど、知らないふりをして走ったら。



ガコ。



「あ・・・」

怖ーい顔のお兄さんが数人いる中庭に、落ちちゃいました☆(ました☆って場合じゃないっ!!)





中途半端な優しさは



( それがあたしを凄く傷つけるってことを知らないくせに )