カラン、とストローの入ったアイスティーが音を立てた。 「・・・それで、ちゃんはこんな時間に僕の家に、家出してきたんだね」 「別に家出じゃないもん。ちゃんとスピさんち行ってくるって言ったんだから」 あたしはそのままA・Tで走って、宣言通りスピさんちに行った。 言っておくけど、これは鵺が悪いんだからねっ! あたしの、小学4年生からのアプローチは、全然届かなかったなんて(毎日、本気だったのに)。 「もっと蹴ってやればよかったっ!」 ぎゅっと拳を握ると、スピさんが目の前で苦笑した。 「それにしても・・・」 ギシリと音を立てる。 ・・・・・スピさん、何か・・・異様なフェロモン出てる、よ? あれあれ?と思っているうちに、どんどんスピさんが近くなってきた。 「駄目だよ?年頃の女の子が、独身男の部屋に来たら。――何されるかわからないよ?ちゃん」 ぶわっ!と飲み込まれそうなほどの雰囲気をだしたスピさんが言った。 何されるかって・・・近い近い、スピさん。それよりも、 「スピさんは何もしないって信頼してるよ」 じとっとあたしはスピさんを見上げた。 きょとんとスピさんの眼が見開かれる。 凄く近いし、腕抑えられてるけど、怖いとかは全然思わなかった(だって、スピさんだし)。 「でも、もしあたしからスピさんへの信頼が裏切られて、スピさんが何かしたら・・・・・・一生軽蔑の目で見てやる」 あと、ロリコンってレッテルも貼ってやる。 転んでも、ただじゃ起きないからっ! という目でじっと見ていると、スピさんの眼がふと和らいだ(あとフェロモンも消えた)。 「・・・それは、耐えられないね」 パっと手が離れて、スピさんの顔がどんどん遠くなってく。 あー・・・格好よかった、スピさん(本音)。 「ごめんね、ちょっとからかってみただけだよ。でも、僕はいいけど、他の人のところに言ったらこんなこともあるかもしれないんだから、気をつけなきゃ駄目だよ?」 「はーい」 というか、スピさんは安全だからここに来たんだけどね。 「鵺は鈍感すぎると思うの」 先入観んが強すぎて、あたしを恋愛相手に見れないのよ! 「確かに、鵺君は超がつくほど鈍いからねぇ・・・」 「そう!だから一つ案が浮かんだんだ!」 聞いて驚け、見て叫べ!(いや、叫ばなくてもいいけど) シャキーンとポーズをつけて言うと、スピさんが苦笑した。 「今はスピさんちに行くって言ったから、鵺は家にいると思うの。むしろそろそろ寝る時間だもの!だから、そこに・・・・・・夜這いをかけるっ!!」 こ、れ、ぞ! 「夜中にこんにちは、あれなんだかドキドキしてる、ひょっとして俺ってこいつのことが・・・作戦!」 「ちゃん・・・随分と長いね・・・」 呆れたようにいうスピさんに笑って、あたしはA・Tで家まで走った(ちなみに家までスピさんが送ってくれた)。 「それじゃ、行ってきます!」 開いたままの鵺の部屋の窓に向かって、あたしは走っていった。 「・・・シャレにならないような気がするのは、僕だけかな・・・・・・。がんばれ、鵺君・・・・」 |