「・・・って、意気込んだのはいいんだけど」


ガラリと窓を開けて、あたしは大きく息を吐いた。
目の前にはグッスリと眠る鵺がいた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・夜這いって、何すればいいんだろう」

いや、もちろん、知識としては知ってるんだよ。
そのー・・・えっと、あの・・・うん、よ、夜這いをね!
でも正直できるのかって言われると、ちょっと無理、かもしれない。


それよりも、何かこんなにもグッスリ寝てる鵺に段々とムカついてきた。
普通こういうときって心配して起きてたりするとか、うなされてたりとかってする愛嬌ぐらいあってもいいじゃない!
なのに、鵺はものすごくグッスリと・・・言葉にすれば安眠状態だ。



「ムカつく・・・」
どおりゃっ!
「ぐふぅ!」
ズシンとあたしは鵺の腹の上に乗っかった(あ、体重ばれたらどうしよう・・・)。


・・・!?」
「この鵺の馬鹿野郎め!何安眠してるのさ!!人が家出したっていうのにぃい!!」
「ぐはっ!うぉ!お、い、!やめっ!」

胸倉を掴んでグワングワン揺らしてやった。あー、重。
一番上まで持ち上げて手を離すと、ぐぇっと鵺がつぶれた蛙みたいに鳴いた。

ざまーみやがれ。



「ただいまー鵺。何かムカついたんで夜這いに来たよ」
「おかえり、ってはぁあああ!?」
今夜中だよー、もう鵺ってば迷惑人だなぁ。

「ほらほら、静かにしないと、チビたちと部屋が離れてるって言っても起きちゃうじゃん」
「あ、ごめん。って、違うだろ!何言ってんだよ、つーか何言っちゃってんの!?」

ギャーギャー騒ぐ鵺の顔がどんどん赤くなっていく。
鵺高校生なのに初だなぁ。夜這いって言ったくらいで。


「・・・、頼むからそこどいてくれ・・・」

「は?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・って、ぎゃああああ!!」
うぁ!これよく考えたら馬乗りだったよっ!



ぎゃーす!何か、あたしが襲ってるみたいじゃん!・・・って、あれ?夜這いだからいいのか?
うーん・・・まぁ、とりあえず気にしない方向で行こう。
そうとなれば最初からやり直しだよね、とあたしは鵺の上から降りた。

「ねぇ、鵺。夜這いってどうしたらいいの?」
「ぶふぉ!!!」
あ、吹いた。


「な、なな、何言ってんだよ!アホ!」
「アホって言わないでよ!!第一鵺が悪いんじゃん!」
そうだ、思い出したけど全部の原因は鵺だよ!鵺!

「はぁ?」
「毎日告白もしてるのに、全然意識もしてくれない鵺のせいじゃんか!」
だから襲いに来たの、と叫ぶと鵺が苛ついたような顔をして叫ぶ。


「んなの、義務教育卒業してねぇのに手出すわけにもいかないからだろうが!」


思考回路が停止した。





夜這いに馳せ参じました!



( と意気込んだのはいいものの、夜這いって具体的なところがわかんないんだけど・・・ )