「あぁあああ、うぅうううう・・・」

別に、気が狂ったとかそんなわけじゃないと思う。
いや、この叫びでそんなこといえないような気がするけど、とりあえず一般人だよ、あたし。

未だに悩んでいるのは、鵺の気持ちのことで。
正直、キスじゃなくってもいい(いや、別にキスより上がいいわけじゃなくってそうじゃなくて)。

ただ、鵺の。


「あぁああ・・・」
ぎゅっと膝を抱えて、あたしは膝に顔を埋めた。

しつこい女って嫌われるのか・・・ううん、でもしつこさって今更だし。
そう考えていると、突然誰かに腕を掴まれた。


!」

は?なんで窓から来てるの?

「ぬ、」

えって続ける予定だったあたしの声は、鵺の口に飲まれた。



・・・・・・・・・・・・・・・アテンションプリーズ。
って違う!落ち着け落ち着けあたし!一体なんでこんなに鵺の顔が近くにあるんですか!

はい先生!それは鵺とあたしの唇がくっついてるからです!・・・って、え?


「・・・」

「・・・(え、あ、・・・柔らかい)」

あたしは目を真ん丸に見開いて鵺を見つづけた(あ、目って瞑るべきだったのかな)。

ゆっくりと唇が離れていって、あたしは。



思わず鵺の唇に吸い付いた。



「ちょ、まっ・・・お、っ・・・」
鵺が離れたときに時々何か言ってたけど、あたしの耳には届かなくて、あたしはただ一心不乱に鵺の唇に自分の唇を重ねていた。
もう理性まるで無視の本能丸出しで、ただ重ねるだけのキスを何度も繰り返して。




「っだぁ!!」
バリっと真っ赤な顔をした鵺に肩を押されたとき、ようやくあたしは正気に返った。


「あ・・・ごめん、鵺。我慢できなかった・・・」
「普通女のセリフじゃねぇだろ!」
「いや、その・・・鵺の唇って意外と柔らかくて」
「阿呆!つーかなんで俺が襲われなきゃなんねぇんだよ!」
気付いたらあたしは鵺を押していて、鵺の向こうには床があった。


「で、でも手を出したのは鵺が先じゃん!」

「そうだけどよ・・・」
あたしがそう言うと、鵺はさっと目を逸らした。


頭の中の不安なんてどこかに消えていて、ただ唇と唇がくっ付いたってだけなのに、あたしは嬉しくて嬉しくて仕方が無かった。
先に手を出してくれたのは鵺で、不安なんて一ミリもなくなっていた。


「鵺、鵺好きだよ」

ずっと昔から鵺しか見えてなかったんだから。
責任とってよ。



・・・好きだ」
頬を染めて言う鵺に、あたしは涙が出た。




「ねぇ、鵺。もっかいキスしてもいい?」
「俺がされる側!?」

叫ぶ鵺にあたしは覆い被さってキスをした。





目覚めは王子様のKISSで



( 唇と唇が触れ合うという行為には、きっと魔女なんかじゃ叶わない強さがあるんだよ )