圭の言葉が頭の中を繰り返し巡った。 恋・・・?まさか、そんなのあるわけがねぇ。 「――え・・・鵺!」 「どわ!!」 な、何でこんな時にアップで来るんだよ、お前は! 柄にもなく思いっきり心臓がバクバクしてるし・・・。そんな俺の心境なんて知らないが首を傾げた。 「変なの。ねぇ、鵺。今日のお出かけどっちの服がいい?」 そう言われて、今俺が何してたか思い出した。 と出かける準備してたんだ。 二つずいっと見せられた服は、どっちもによくにあ―――だぁああ!!ち、違うからな!ちげぇ! だ、誰に否定してんだよ、俺。 「じゃ、じゃあ右のやつ」 「わかった!」 着替えてくるねとパタパタと走っていくを見送った。 毎回俺と出かけるときはああやって俺の好きなほうをって考えてるらしくて聞きに来る。 いや、健気でかわ・・・だから違ぇっての!!! 俺は何度か何に対してかわかんねぇけど否定しまくった。 「んー・・・」 「まだ決まらんねぇのか?」 二つの品物の前で唸る。 「こっちは凄く可愛いけどお小遣いじゃ足りないし、こっちは安いけどちょっとデザイン好きじゃないし・・・」 ・・・ったく、仕方がねぇな。 俺はが気に入ってる方を見た。まぁ、確かにに似合う。俺の金で十分買えるし。 うんうん唸ってるを見下ろして、その頭を撫でてやる。 「いっつも家事とか頑張ってるしな。かってやるよ」 「え、本当!?」 驚いたように見あげて、その顔がぱぁっと輝いて笑った。 別に・・・別に甘やかしてるわけじゃねぇぞ。頑張ってるのは事実だし、今日は俺の機嫌もいいし。 「ありがとう、鵺。大好き!」 こういってくれると嬉しいっつーか。・・・だから違ぇっての! レジに並んで買い物を終わらせて外に出ると、ふと圭が女の子を連れて歩いていた(デートか・・・しかもあいつこっち気付きやがった!) と一緒なのを発見してニヤリと笑って、口をパクパクと動かして――だから恋じゃねぇっつの!! 荷物を持ってやって片手で手を繋いでるのだって、癖っつーかいつものことっつーか。 見下ろしたが凄く嬉しそうに繋いでる手を見てたりとか。 ぎゅうっとさらに強く握ってくるに、思わず顔を逸らしかけた(日暮れ時をこんなに感謝したのははじめてだ・・・)。 ――『恋ね。それは恋よ』 圭の言葉が頭の中に蘇った。 視線が合って、また嬉しそうに笑う。 「ありがとう、鵺」 さっき買ったやつのこと、だけじゃないんだろうと思う。 「ん、どういたしまして」 ・・・ああもう!白状するっつの!! 俺はのことが好きになってんだよ、くそ!! |