「あ?即席お化け屋敷?」
鵺の言葉に、あたしは首を傾げた。
第一、何、その即席お化け屋敷って。
「ガキ共と一緒にな・・・シムカの、恋文を届けに」
あと、空の王候補も見に行ってくる、と鵺が呟く。


「かわいそうに、鵺きゅん、橋渡しか・・・」
「かわいそーにー」
「ダメダメだねーぬえ」


ハンカチを目にあてて、泣いているフリをするあたしに続くように、子ども達も乗る。
うん、君たち、中々いい大人になれるよ!(ぐ!)

「何だそれ!てめ!トリックスター!!変なことガキ共に吹き込むなっつーの!」
ギャンギャン、と怒鳴り始めた鵺に、あたしは耳を塞ぐ。
あーもう、大きな声で喋らないでよー。
「酷いなー鵺きゅん。俺は鵺きゅんの恋路の心配をしてあげてるだけだぜ?」
酷い酷いー!と訴えると鵺が呆れたように溜息を吐いた。

「なぁ、その、即席お化け屋敷?」
「ああ」
「俺も参加してもいい?」
そう言うと、鵺が変な顔をした。



「じゃーん、どうよ」
「・・・・・・・・・・・」
出てきたあたしに、ポカン、と鵺が口をあけた。


それもそうかもしれない。
今はあたしは、顔をさらして、化粧をして、ウィッグを被って。
普段の素とは全然違う感じにした。
いかにも、雪女スタイルだ。


「お」

「お?」

呟いた鵺の言葉を繰り返すと、ユルユルと指を指された。



「女に見える」



「それって、誉めてんのか?貶してんのか?」
本当は、女だから女に見えなきゃ困るんだけど、今は男だし。
とりあえず、怒ったフリをしておく。
「すごーい、トリックスター!お姉ちゃんにみえるー!」
としたで言うエっちゃんに、ニコっと笑うと、また女の人に見えるといわれた。
・・・あれ?あんまりやんないほうがバレないかな・・・。

「ま、とりあえず行こうか、鵺」
「お、おう」
そうして、墓へとくりだした。





なけなしの良心が痛むなぁ・・・



( さぁ、お化け祭の始まりだよ )