ゆるりゆるりとアレンが近づいてきて、その顔の魔王様っぷりに、あたしは動けなくなった。 だ、だって、この空気の中動けるとか、ありえないからっ!! あともう少し、手を伸ばせば触れられる距離まで近づいて。 メキョ。 「・・・あ、あああああああああああああアレン、さま?」 この人、素手で後ろにある大木の一部を握りつぶしたぁっ!?!? 「―――というか、まずいろいろ言わせてもらっていいですか?」 にっこりと、ニョキっと魔王様のつのを出したまま、アレンが天使の笑みでほほ笑んだ。 「あ、はい。どうぞ」 断ったら死ぬ。 「出発前に神田とイチャついてるから、本気にならないとまずいと思って、全然そんな気がないことが発覚した神田に勝負まで挑んだりしたのに・・・っていうか、神田の君への認識が妹だったことに驚きましたが・・・。とにかく、人が帰ったら告白をしようと決意をして」 スゥっとアレンの笑顔が一気に冷たくなっていく。 あ、ああああ、あのっ!あれ、んさまっ!!(ガタガタ) ミシっと後ろの樹齢何年かわからないような大木が音を立てる。 「連れ出してみれば絶叫されて逃げられる?・・・僕を馬鹿にするのも、やめてくださいね」 耳の傍で囁かれたアレンの低い声が、ゾクっと背筋を走った。 「アレ、」 「もう一度言います。・・・僕は、のことが」 血が、頭まで駆け巡る。 「だめっ!!」 ぎゅっと耳をふさいで、後ろの木に体をこすりつけるようにして逃げた。 「・・・」 アレンがあたしの手に触れて離そうとするけど、それに首を振って振り払った。 「言わないで・・・」 「」 「聞いたら、あたし暴発しちゃう・・・。アレンが好きすぎて、も、無理だから」 だから、逃げてって言おうとしたのに、その言葉は口にならなかった。 影が落ちて、見上げると優しく微笑んでくれてるアレンがいて。 ゆっくり耳から外される手に、抵抗できなくて。 ふわりと、アレンが近づいて。 柔らかい感触が、唇に触れた。 「好きです、」 アレンの静かで低くて、凄く優しい声があたしの耳を撫でて頭の中を支配する。 泣きたいくらいに、うれしくて。 もう、無理、なのに・・・。 「アレ、ん、にげ・・・」 早く、早く、爆発の被害の届かない場所に。 「これだけ激しいのがの想いなら、僕は全部それを受け止めるだけだ」 ぎゅうっとアレンの腕が背中に回って、また柔らかい唇が、あたしの唇に触れた。 その時、とても大きな音がした。 |