まずい、本格的に逃げ場がなくなった。 ドアの前で立ち尽くすキキョウさんを見て、あたしは本当に泣きそうになった。 逃げるのはイルミに腰を掴まれてるから無理。 っていうことは、あたしはこのまま不法侵入者として拷問されたり、その果てには殺されたりするわけで。 ・・・やばい。 「んまぁああああ!!!あなた!あなた!!」 ああ、でも死んだら元の世界に戻れたりするかなぁ・・・。 でもこの世界にやってきたきっかけが、トイレに行こうとしてトイレの扉を開いたらそんなことになってたわけだから、無理かもなぁ。 「どうした?」 うぅ、でも拷問は嫌かも。 できるなら痛みを感じないくらいに瞬殺してほしいです。 「見て頂戴!あなた!!」 ミケに頭を丸ごと一口で食べられたら、意識が先になくなるかなぁ・・・。 「なん、」 「イルミが!イルミが!」 でも、どうしようもないよね。 「漸く女の子を連れ込んだわっ!!」 「って、おいっ!!」 あたしは思いっきり全身全霊で叫んだ。 まて!!さっきまでのあたしの不安とか葛藤とか諦めとか苦しみとか悲しみをどうしてくれるっ!! っていうか、どんだけ淡白なんだ、イルミ・・・。 「お見合いで一緒の部屋に放り込んだ女達はすぐ殺してたのに、生きてるわ!あなた!!」 ・・・前言撤回。 淡白とかそんなレベルじゃない。 「・・・面倒なことになった・・・」 「同感です」 確かにベットで二人して転がってるし、腰つかまれてるし、空気を無視すればイチャイチャしてないこともない。 空気を無視すれば!の話だけど。 「イルミはひょっとしたら女の子に興味がないのかと思ってたけど、違ったのねっ!!」 キキョウママンが歓喜に震える。 キキョウさん、もうちょっと空気読んでください、マジで。 「やったな!キキョウ!」 「ええ!あなたぁ!」 ひしっと抱きしめあう二人。 うわーい、ラブラブぅ・・・。 「ちょっと可愛くないし、細くないけど・・・イルミが選んだ人ならしょうがないわっ!イルミが女の子に興味を持ったなら、それでいいのよっ!」 きゃーっと叫ぶキキョウさん。 だから、えっと・・・マジで空気読んでくださいっ! 殺気がビシバシ飛んでますからっ!! 「あなた!今日はお赤飯よっ!」 えー?日本の文化っ!?(っていうか、文化なのか?あれ)っていうか、ちょ、ま、キキョウさ・・・。 「・・・めんどくさ・・・」 つぶやいたイルミの言葉に、思いっきりうなづいた。 |