「貴方どうして風呂も入れないんですか」 風呂に入ってきなさい、と見送ったのはいいものの、何だか嫌な予感がして骸は風呂を除いた。 本当は行くつもりなどなかったのだが、かなり鍛えられた勘であるし、もし何かあったら自分が綱吉に怒られる(そんな時骸は残念ながら反抗できない)。 絶対零度で微笑む綱吉を思い出して(唯一、彼が叶わないものである)、骸は仕方が無く風呂場のドアを空けた。 ガラリと思い切り開けると、風呂に沈んでいるの姿があった。 というわけで骸は今現在の頭を洗っているのだった。 「えっと、向こうの偉い人が」 「理由を聞いているわけではありません。というか入れられる間に学習をしなさい。馬鹿じゃないんですか?いいえ、むしろ馬鹿ですね」 は、と嘲笑う骸に、は「うん、ごめんね」とシュンっと項垂れた。 そんなの態度に骸は拍子抜けをしたように一瞬動作を止めた。すぐにまた元の作業に戻る。 「ほら、流しますよ」 「はーい」 何だかんだいいながら伺いを立てている辺りが優しいのだが、本人ですらその言葉が気遣いだということに気付かずにバサリとお湯をかける。 予告されていたは目を閉じていて、流された泡に目を瞬いた。 「まだ残っているのでもう一度流します」 「うん」 ザバリ、とまたお湯をかけられては目を閉じる。 それを見て骸は「僕がするのは一度だけです。後は学習しなさい」と言って、手にもっていた小さなタオルでの顔を拭いた。 「次は身体ですね」 手にもったスポンジにボディソープをつけると、骸は泡立てての身体に沿わせてスポンジを滑らせる。 だてに3人(犬、千種、髑髏)世話をしていないためか、その手際は良い。 また「流します」と言う骸には頷いた。 「こちらではあまり湯船には浸からないのですがね」 風邪を引いて僕が綱吉君に怒られては困ります、と骸は言いながらを抱え上げて浴槽に浸からせた。 チャポンと音がしてきちんと座れたに、骸が出て行こうと立ち上がる。 「・・・何のつもりですか」 が、袖をつかまれていて、出て行くことが出来なかった。 眉間に皺を寄せて問うけれど、はニコニコと笑うだけで答えようとはしなかった。 そんなに、骸ははぁ、と溜息を吐いて浴室の淵に座る。 「どうして君はそんなにも僕に懐くんですかねぇ」 まったくもって迷惑なんですけどね、という骸にはニコニコと笑ってじっと見つめる。 そんなに骸はまた溜息を吐いた。 「まぁ、煩わしくなければ構いませんか・・・」 内心、少し受け入れてしまっていることに自分で吃驚しながらも、骸は楽しそうに風呂に入るを見下ろした。 どうやら最初溺れていた原因らしい石鹸(どうやらこれに滑り浴槽に落ちたようだった)が遠くに飛んでいることに気付いて苦笑しながら、洗いたてのの頭をポンポンと撫でた。 僕も、大概甘いですね。 きっとに何かがあったら絶対零度の笑みで怒るだろうあの人の影響だ、と骸は内心愚痴を言って、それからメロディもよく判らない歌を歌うを見た。 「まぁ、仕方がないですね」 これも六道の輪廻というものですかね、と溜息を吐いた。 |