「近寄るな、触るな。どこかにいけ」 普段の声よりも一層低い声で骸は拒絶をしめした。 その声は氷より冷たかったし、一般人であれば恐怖に震え、声も出せなくなるだろう。 目の前のその存在の行動に対して、骸ははっきりとした拒絶をする。 (ちなみに、彼の拒絶理由に「男女だから」は入っていない、というか自覚すらない) けれど、キョトンとして見あげてくる瞳は一切恐怖すら移さずにそこにある。 それに骸ははぁ、と深い溜息を吐いた。 「ねぇ、一緒に寝よう?」 コテン、とが首を傾げた。 「絶対に嫌ですね」 突然入ってきたから何かと思えば、と憎々しげに呟く骸に、はニコーっと微笑んだ。 それに骸は虚を付かれたように目を瞠ったのだけれど、いやそうに眉を寄せる。 「一緒に寝よう?」 首をかしげたままはもう一度尋ねた。 「嫌です。部屋に帰りなさい」 もぞもぞと布団に這い上がろうとするをベシっと叩き落して言う。 が、はまたすぐに這い上がってくる。 執念、にも近い行動に骸は「一体何なんだ」と呆然と見つめた。 「おやすみなさい」 呆然と骸がを見ていた隙に、は布団の中にもぐりこんで、ゴロリとねっころがった。 「・・・・・・」 ガクリ、と骸は項垂れて大きく溜息を吐いた。 すでには夢の中へと旅立ってしまっていた。 「・・・どうして、君は」 優しくその髪の毛に触れて、そっと壊れ物を扱うように撫でた。 生きているということを示す呼吸音に、体温。 その全てが煩わしいはずなのに、気にならなくなっているという事実に少し戸惑った。 以前ほど、一緒にいたくないという感情が薄れてしまっている。 「生者は醜い。欲にまみれ、家族ですら見捨て、金を求め・・・。死んだ姿はあんなにも美しいのに」 生きているものは、醜い、はずなのに。 布団の中で眠るにそっと触れる。 は安心しきったような寝顔でグッスリと眠っていて、骸は僅かに拍子抜けした。 「変な人間ですね、君は」 骸もその隣に転がると、を抱きしめて眠った。 |