どうして、と骸があたしに聞いた。 「どうして、君は僕を好きだというんですか」 あたしが骸に抱きついて、骸が大好きと言ったら、骸は固まってしまった。 どうして、なんて理由はないんだけど。 「好きだから、よ?」 おかしな骸、というと、また骸は変な顔をした。 何か、怯えているような顔。 「僕には全く持ってその感情がわかりませんね。貴方のように悪趣味なことも」 僕を好きになって、なんの利益も無いでしょう。 そう笑う骸は、きっと愛されていることを認めないんだと思った。 「ねぇ、骸」 ぐいっと袖を引っ張ると、その手はパシンと音を立てて叩かれた。 ジンジン痛んだけど、絶対に離さなかった。 「ねぇ、骸。骸は愛が怖いの?」 「は、」 骸が息を飲んだ。 ねぇ、そうなんでしょう、骸。 「愛に置き去りにされてきたのね。だから愛することが、愛されることが怖いのね。愛したものを、愛されたものを失ってしまうことが怖いのね。だから、あなたは誰も愛さなかったのね」 ねぇ、初めて会ったときに思ったの。 「だから、あんなにも寂しい目をしていたのね」 「――っ黙れ」 低い声があたしの耳に届いた。 愛された後、一人輪廻に戻って失ってしまうことが怖くて怖くて仕方がないんだわ、骸は。 「一人になってしまうのが怖くて、最初から一人でいようとしてしまうのね」 「黙れっ!」 バン。 と大きな音がした。 骸の見開いた目と、倒れていくあたしの身体と、飛び散る血に、骸の手にある銃。 あたし、骸に撃たれたのね。 全然怖くなんてなかったけど、段々肩がジンジンと痛み始めた。 ゆっくりと視界が消えていく。 「むく、ろ」 目の前が暗くなっていく、世界が侵食されていく。 地面が近づいていって、驚いたように目を見開く骸が遠ざかっていく。 ガラン、と銃が落ちた。 「む」 ふ、と世界が消えた。 |