「むく、ろ?」
目を開くと人影が見えて、あたしは骸の名前を呼んだ。
段々とはっきりしていく視界に映ったのは、心配そうにあたしを見る綱吉だった。

「つ、なよし」
、よかった・・・」
ホゥっと長い息を吐く綱吉に、あたしが体を起こそうとすると止められた。

「骸は?」
「え、ああ・・・骸は屋内庭園の方にいると想うけど・・・」
あたしが聞くと、綱吉は顔を逸らして言った。
骸に、何か起こってるんでしょう?


?」
黙り込んだあたしに綱吉が声をかけた。

身体はギシギシ言って凄く痛いけど、でも、あたし。

「行かなくちゃ」

ごめんね、と綱吉に言って、あたしは腕についたチューブを引っこ抜いて転がり落ちるように走り出した。
後ろから綱吉の慌てた声が聞こえたけど、それでも後ろは向かなかった。



「骸っ!」
短い手足がもどかしい、速く走れない体がもどかしい。


ペタペタ音が鳴って、あたしはやっと屋内庭園についた。




その、入口の近くに骸は座り込んでいて、片膝を立てて俯いていた。
「骸」
手を伸ばして骸の体を精一杯抱きしめた(拒絶はされなかった)。

「助かったんですか、残念ですね」
骸は動かないまま呟いた。


「骸、骸、大好き」
「君は、僕に同情をしているんですか?」
冷たい声がした。


「同情されるなんて真っ平です」
その手を離しなさい、と骸が冷たく言った。


「大好きよ、骸」
あたしは強く抱きしめた。
いつからここに座ってたのかは分からないけど、ここに来たときにとても景色に溶け込んでいて、泣きそうになった


「あたしは、骸が輪廻を巡っても、ずっと一緒だから」
ピクリと、骸の腕が動いた。

「堕ちるなら、一緒に堕ちていくよ」

大好きよ、骸。大好き、大好きだよ。


ぎゅうっと抱きしめると、ソロソロと骸の腕があたしの背中に回った。

「骸、大好き」


返事の返事の代わりって言うみたいに、骸はあたしを抱きしめた。





もっと近くへ、もっと傍へ



( 怖い時には手を握りつづけていればいいんですよ/バジル )