おいおいおい、待ちなさいよ。

迷子っていうのは子猫ちゃんって相場が決まってるものでしょ?
けれど、そんな常識は今じゃ通用しないっていうか、考えない方が良いのかもしれない。



「らからぁ、聞いてるんらっての!どこにあるんだよっ!」
「ひ、ひぃ!!と、とととと、と言われまして、もっ!!」

「でっかいとこで、広いところらっつてんだろ!」


とりあえず、迷子らしい。

散々友人が吹き込んでくれたおかげで、あたしはすぐにそれが誰かわかった。


城島、犬だ。

彼の独特な舌足らずなしゃべり方が女の子の保護欲を掻き立てるらしい。
まぁそれはいいが。


「城島、城島。多分それじゃどこかわからないよ」

「んあ?」

剣呑な城島の瞳があたしの方を向いた。
うん、やっぱり城島犬だった。



「広いって、どれくらい?何か目立つようなものはある?」


相手がいきり立っているときはそれ以上の勢いで巻き返すのが相手を冷静にさせるコツだ。

尚、この会話は相手の知能レベルに合わせる必要がある。
いきなり城島に「広さって大きさにすると何に対比したらいい?」とか「何か回りに特徴的な建造物ってある?」とかって聞いてはいけない。
相手の知能レベルに合わせて言わないと、またもや憤慨する恐れがあるからだ。


勿論、この言葉は馬鹿にしているわけではなく、今までの総合的な彼への評価だ。
若干馬鹿にしてるとも言えないこともないけれど。



「そ、そんなの言っらって・・・兎に角広いらっつーの!」
「じゃあ、その中には何があるの?」

案の定、あたしの巻きたてた言葉をすぐに理解した城島は戸惑ったように言った。
とは言っても、広いところ・・・ねぇ。


「えっと、映画館らったところと、ボーリング場らったところと・・・」

・・・待て。
映画館にボーリング場もいいとしても・・・「だったところ」って。


あっさりと答えは見つかった。


「えっと、もしかして黒曜ヘルシーランドっていうところ?」
ここからだと、かなり離れてるよね・・・?

「そ、そうともいうれすっ!」

そうとしか言わないっつーの。
とりあえず先ほどまで脅されてた少年はどこかに逃げたようだ。
まったく、女の子一人残して逃げ出すなんて、男として最低だぞー。


「とりあえず、連れて行ってあげるよ」

とは言っても、別にあたしは城島は怖くなかったし・・・まぁいいか。
そう思って無理矢理城島の腕を掴んで引っ張って歩き出した。


これ女子に見つかったら妬まれそうだなーとは思うけど、まぁ気にしない・・・でいよう。



迷子の迷子の子猫ちゃん・・・じゃなくて、子犬ちゃんを拾った今日だった。
ってことは、お巡りさんは猫なのか?





迷子の迷子の



( 子犬ちゃん。貴方のおうちは黒曜ヘルシーランド )