夕方に川原を散歩してると、沢田君がいた。 「よく逢うねー」 えへーっとあたしは笑った。 「そうですね」 どうやら獄寺君と山本君とは一緒じゃないらしい。 沢田君は、笑顔がとても柔らかい人だなぁと思う(きっと遺伝か何かだよね、多分)。 沢田君の右手には醤油が一本入ったビニール袋があった(おつかいかな)。 「先輩は散歩ですか?」 沢田君がおっとりと聞いてくる(学校だと騒いでる印象があるけど、本当はおっとりした人なんだろうな)。 「うん、散歩。あたしこの川原大好きなんだ」 恭弥君との思い出があるんだよ、というと思い出?と沢田君が首を傾げた。 「小さい頃にね、あたし滑って転んじゃって、川に落ちちゃったの」 ほら、あたし馬鹿だから、というと沢田君が苦笑した。 「そうしたら恭弥君が助けてくれてね」 あの日から・・・本当は、もっと前から、あたしのヒーローなんだよ。 ポシャン、と石を投げると音がして落ちた。 「あたし怖くって怖くって、死んじゃうかと思ってて」 でもね、そう言ってのびをした。 思い出せるよ、恭弥君。 一つ一つ、言葉だって表情だって気温だって、全部全部。 だって、大切な恭弥君との思い出だもんね。 「でもね、助けてくれた恭弥君のほうが、もっともっと泣きそうな顔してたの」 「ひ、ばりさんがっ!?」 ええ!?と沢田君が叫んだ(おいおい、ちょっと失礼ですよ、君)。 「恭弥君、群れてるから嫌いって程酷くないんだよ?」 第一恭弥君だって群れてるから嫌いってわけじゃないんだよ? 群れてるってことを盾にして横暴なことしたりとか、そういう人に酷いだけなんだから。 本当はとってもとっても優しくて、少し心が弱い人なんだよ。 「死なないで、っていうから、あたし恭弥君を抱きしめて、死なないよ、ずっとずっと傍にいるよって約束したんだ」 ずっとずっと、一生傍にいてあげるよ。 恭弥君が死んでしまうまで、死んでしまっても、恭弥君が寂しくなくなるまで。 ずっとずっと、一緒だよ。 「先輩は・・・」 沢田君が呟いたから振り向くと、沢田君はやさしい顔で笑っていた。 「ん?」 「先輩は、雲雀さんのことが大好きなんですね」 色んな意味で、という沢田君にうん、と頷いた。 「大好きだよ。世界で一番よりずっとずっと、あたしの命賭けて大好きなんだよ」 そうやって思えることすら幸せなくらいに。 そう言うと、やっぱり沢田君は柔らかく笑った(綺麗に笑える人だね、沢田君は)。 (きっときっと、沢田君も色々あるけど幸せな人なんだろうとあたしは感じた) |