誘拐、されました。




「へ、へ、ヘルスミー・・・?」
恭弥君が聞いたら「ヘルプミーだよ、馬鹿」と言われそうだ。って、そうじゃなくって、何故かあたしは誘拐されてしまいました。
いつも通り鞄を持って学校に向かっていったら(恭弥君は風紀のお仕事があるから先にバイクで行ってしまった)、突然出てきた男の人達にロープでグルグル巻きにされて運び出されてしまった。
やばいよ、じゃなくて、簀巻きになるから!(何か違うけど!)


鞄からあたしの携帯を取り出して、男の人が勝手に使う。自分の携帯使ってよね!もう!!
そう思ってると、突然雲雀!という声が聞こえた(この人達恭弥君に電話してるの?)。
女は預かった、返して欲しかったら〜みたいなありきたりのセリフを言って、その男の人はあたしの鞄に投げ入れた(携帯がっ!)。


「なぁ、これで本当に来るのかよ」
こいつ利用価値あんの?とかって言って、一人があたしをジロジロと見る(失敬な!)。
「来なかったら来なかったで遊んどけばいいだろ。来ればもうけもんだ」
それに、これだけの数があって負けるわけがねぇだろ。
といってその男の人がふんぞり返って座った(こんな奴には絶対に恭弥君は負けないよ!)。


「お弁当に筆箱に携帯にポッキー・・・おいおい、学校に遊びに行ってんのかい?ちゃん」
下品にゲラゲラと笑い出した。


多分、というか100%この人達は昔恭弥君に咬み殺された人で、それで恨んでて、あたしを人質にして恭弥君に一泡吹かせてやろうってことなんだと思う(というか絶対にそうだ)。
でも、恭弥君はあたしのヒーローなんだから、絶対に負けたりしないよ(ヒーローでなくても、こんな人たちには絶対に負けないから)。


恭弥君は、来てくれる。

知ってるけど、でも、とあたしは思う。
面倒だったら来なくてもいいんだからね?きっと、あたしでも勝てる(と思う)よ、この人達なら!
助けに行くのが面倒だったら、あたし頑張って恭弥君のところに帰るからね。

恭弥君がもういいよ、っていうまで、ずっとずっと傍にいるから(そうして一人にはならないよって言いつづけるから)。
だから、待っていてね、恭弥君。


キッと、目の前の人たちを睨んだ。縄は・・・よし!外れた。


「雲雀恭弥の幼馴染を、なめるなよ、こんにゃろうっ!」
ガ、と音を立てて、思いっきり目の前の男の人の急所を蹴った(女の子の戦い方ですよ、これは!)。


「っ!!て、てめっ!!」
ブンっと振り下ろしてくる鉄パイプを避けて、あたしは入口に向かって走り出した。


大丈夫だよ、恭弥君。あたし、今すぐ帰るからね。
もう大丈夫だから、いらないよっていわれるまで、あたし恭弥君の傍にいて、大好きっていいつづけるから。

待っていてね、恭弥く、


「いっ!」
「掴まえたぞ、このアマっ!」
ガシっと襟を掴まれてブンっと投げられた。壁にぶつかって、凄く体が痛い。

「なめたマネしやがって!」
そう言って、前が引っ張られてブチブチと服が開いた。

帰れないのかな、あたし。ダメだよ、帰らないと。


「きょ、や・・・くんっ!」


だって、恭弥君の傍で、一人じゃないよって言わないと、いけないのに。




「・・・何してるわけ?君」
扉が開いて(ほら、やっぱり輝いてる)、そこには恭弥君がいた。





怖くないよ、貴方のためなら



( まるであの時みたいに、キラキラ輝いて、とても綺麗だ )