「馬鹿じゃないの?」 「・・・はい」 ごめんなさい、というと恭弥君が大きく溜息を吐いた。 ちなみに、ここは並盛病院だ。 あの倉庫(だったらしい)でのあたしの脱出劇のことを言うと、怒られた。 頬も思いっきり抓られた(い、痛かったっ・・・!)。 「本当に、は馬鹿だね」 恭弥君の米神に怒りのマークが見えた気がする(きっと気のせいじゃないよね)。 「恭弥君のおっしゃるとおりです」 ごめんなさい、と頭を下げると、恭弥君がまた馬鹿、と言った。 「僕が助けに来るって信じてなかったわけ」 「信じてたよ。恭弥君が来てくれるって知ってたもん。でもね、面倒だったらいいんだよって思って」 「・・・面倒って?」 「あの倉庫、遠かったでしょ?助けにくるの面倒だったら、いいんだよって思って。あたし、必ず恭弥君の所にかえるから」 だからね、というとまた恭弥君にぎゅっと抱きしめられた。 「・・・本当に、は馬鹿だね」 「うん、馬鹿だよ」 頷くと、自分で認めてどうすると、と恭弥君が笑った。 ぎゅっと抱きしめてくれる恭弥君の体温は、低体温だけど暖かい。 「面倒なんてことあるはずないよ。何かあったら何もせずに僕を待ってろ」 「・・・」 「返事は」 恭弥君の顔が見れなくて、あたしはちょっと離れて恭弥君の顔を見つめた。 あの川原の時みたいに、恭弥君はちょっと泣きそうだった(人が見たら無表情だって言うのかもしれなけど、あたしはそう思った)。 「駄目だよ。きっとあたしは走って恭弥君の所に帰ろうとするよ」 にっこり笑って、あたしは恭弥君に抱きついた。 「早く恭弥君のところに帰りたいから、怪我したって無茶したって、あたしは逃げ出して恭弥君のところに帰るよ」 そう言うと、恭弥君は少しだけ、本当に少しだけ震えた声で、「馬鹿じゃないの」と言った。 「本当に、は馬鹿だね」 「うん、恭弥君馬鹿だよ」 「馬鹿じゃないの」 自信満々に言うと、馬鹿だよ、と返された。 「だって、恭弥君のことが大好きなんだから」 だから親馬鹿ならぬ恭弥君馬鹿だよ、というと強く強く抱きしめられた。 「僕も」 小さく耳元で恭弥君の声がする。 「うん?」 「好きだよ、馬鹿」 クスクスと耳元で笑っている恭弥君の声が聞こえて、あたしはおどけたように頬を膨らませた。 「馬鹿って名前じゃないですけどー」 そう言うと、恭弥君の顔が前に回ってきて、笑顔の恭弥君が見れた(凄く素敵!)。 「好きだよ、」 |