「『き』・・・で最後が『や』。間が『へ』『み』『の』・・・・。きのみへや・・・きみのへ」
最後まで言わずに、走り出した。

「ああ!もう!!スタート地点じゃないかっ!」
こういうひっかけなら予想が出来たはずなのに!と綱吉は内心歯噛みをした。
よっぽど、余裕がなくなっていたことなのだろうか、と。

時間は残り30分を切っていた。



「絶対、覚悟してやらないからなっ!」
昔の俺なら逃げてたかもしれない。
護れる自信がない、なんて逃げ道を探して思いを言うのですら逃げたかもしれない。
ああ、でも、護れないから、じゃなくって。

「血反吐吐いたって、俺の体を盾にしたって、護ってやるっ!」


待ってろよ、ハル。積もり積もったぶん、全部言うから。
応援してくれて、背中を押してくれた、みんなのためにも。


「ハルっ!」
きゅ、と綱吉は音を立てて止まった。
目の前にあるのは、ついさっきと会話をした場所だった。


扉を開けて、執務室の隣にある寝室を開けようと、ドアノブに手を伸ばして、止まった。

「ハル・・・聞こえる?」
ドアの前にいるよね?と綱吉はそっと声をかけた。
ドアの向こうでビクリと震える気配があったのに気付いて、綱吉は口を開く。

「ハル・・・はさ、きっとこの計画に強制参加されたんだろ?」
とかに押されてさ、と微笑むと、ドアの向こうから小さな声が聞こえた。
「・・・はい」

「折角の機会だからさ、ハルの聞きたいこと、教えて?」
そっと、綱吉の声は知らず知らずと優しい声になる。



「・・・ハルは・・・」
「うん」
「ツナさんのことが、大好きです。本当に、好きなんです」
「うん」
それで、ハルの聞きたいことは?優しく問うと、ハルが若干震えた。


「ツナさんは・・・ツナ、さんは」
「俺は?」


「・・・・・・・・・・・・ハルのこと、を、どう、思います、か?」


最後の方はほとんど涙声で、少しだけ聞き取りにくかったけど。
綱吉は扉の向こうで顔を真っ赤にして震えているだろうハルに向かって微笑んだ。


「ハル、俺は」

聞こえる?
聞いている?

恥ずかしいから、一度しか言わないけど、ちゃんと聞いとけよ?



「ハルが好きだよ」


最後のキーワードは君への思い。





扉は音を立てて開いた



( そうして涙ぐんで見あげる彼女に、彼は恋慕のキスを送る )