二人はきっと、好きあってる。 そう、思った。 「ツナさん大好きです!」 ぎゅっとハルが沢田君の腕に抱きつくのを、沢田君が柔らかい瞳で受け止めた。 そんな二人を山本君は優しそうな目で(まるで子どもを見るようなそんな暖かい目で)見ていて、獄寺君はいろいろハルに反抗したようなことを言ってるけど、無理矢理その手を外させようとはしなかった。 皆、きっと分かってるんだ。 「ちゃん!」 ぼんやりと、思考にうずもれていたあたしを、ハルが呼んだ。 「ハル?」 「ちゃんはこっちですよ!」 首を傾げると、ハルのもう一つの手があたしの腕に回った。 ぎゅうっと強くハルが片手であたしの腕を抱きしめた。 「えへへ、両手にフラワーです!」 「なんか違う気がするんだけど・・・」 そう笑っていると、獄寺君が「十代目の右腕は俺だ!」と叫んで沢田君の右腕に飛びついた(ちょっと、色々と変な構図になっちゃってるよ)。 ちょっと顔を青ざめて笑ってる沢田君を見ていると、今度はあたしの左腕に軽く山本君の腕が絡む。 「じゃあ、俺はこっちで」 ははっと笑う笑顔は、ハルみたいに明るくて、ハルよりも太陽のような笑顔だった。 ん?・・・いやいや、ハルは越えてないよ、うん。 ハルを中心にして、5人横一列に並んでいるなんて変な光景だと思ったけど、笑いが止まらなかった。 むしろ、ずっとこの時間が続けばいいのにって思った。 好きで好きで仕方が無いハルがあたしの右腕を抱きしめていてくれて、笑っていて、他愛ない会話をして。 でも、きっとそうもいかない。 だって、沢田君のハルを見る瞳はとても柔らかい。 いつものことみたいに、ハルが腕に抱きついているのはとても自然で。 そんな腕に抱きついてるハルはすごくすごく幸せそうだった。 沢田君とハルは、きっと近い将来好き同志になって、恋愛をしていけるんだと思う。 ヒヤリと、背中に冷たいものが走った気がした。 ハルとあたしの腕は繋がっているのに、一本線が現れて、駄目だよ、と誰かが囁いた気がした。 そうだよ、駄目なんだ。 ハルはだって普通の女の子で、男の子を好きになる女の子なんだから、あたしの思いなんてきもちわるいに決まってる。 だから、友達として応援してあげよう。 ハルと沢田君が上手く行きますようにって、頑張って応援しよう。 一番にはなれなくっても、恋愛感情は昇華されなくっても、ハルがあたしを大切な友達だと言ってくれるんなら。 笑いあう沢田君とハルの姿が見える。 ハルと繋がった腕の温度は何だか消えてしまったけど、でも、大丈夫。 あたし、ハルが幸せになってくれるなら、あたしを大切な友達だと言って、笑ってくれるなら。 あたしに笑ってくれるなら。 それだけで、構わないんだよ、いいんだよ。 右腕は酷く温度も何も感じなくなった。 |