「あー・・・もう、右ストレートで吹っ飛ばすしかないかな」 この怒りを納めるのは。 とメラメラと燃え上がる沢田君の怒りを携えながら、あたしは公園で呟いた。 ハルにあんな視線を送っておきながら、京子ちゃんっていう本命がいるとか、どういうことなの、それ。 ギラギラと怒りが燃え滾る(もうメラメラは越えた)。 京子ちゃんが好きなんです、っていうハルの顔は少し哀しそうで、さらにあたしの怒りを燃え滾らせた。 でも、沢田君に何かしたらハルが哀しむだろうし(ハルに嫌われるかもしれないし)。 どうしようかなぁ。 ハァとあたしは息を吐いた。 「あれ??」 突然声がして、振り返るとそこには山本君が居た。 「山本君」 「ここで何してんだ?」 ひょいひょいと身軽に近づいてきた山本君はニカっとまるで太陽のように笑った。 (だから、ハルを越えてないんだって) 「うん、ちょっと・・・」 「そうだ!うち来いよ」 「は?」 いやいや、まてよおまいさん。 突然いい案だ!みたいに手を叩いて、あたしの腕を掴んで歩き出した山本(もう君なんてつけてやるものか)がつれてきたのは、おすしやさんだった。 「ここ俺ん家」 野球少年の自宅は寿司屋でした。 と、それはいいとしても、お金ないんですけど、山本ぉ!! 「・・・で、一体京子ちゃんって誰なのよ!」 大丈夫だからと笑われて、お茶を貰って、あたしの愚痴大会が始まった。 「沢田って『京子ちゃん』って女の子のことが好きなの?それだったら・・・あたし傷害罪を起こさないといけないかもしれないんだけど」 この右の拳で・・・。 ポツリと呟いたあたしに、山本が「落ち着けよー」と笑った。 「これが落ち着いてられるもんですか!好きな本命がいて、ハルをあんな目で見てるなら、あたしは沢田をお空まで吹っ飛ばすからね!」 ハルを不幸にするやつだけは許してなるものかっ! そう叫ぶと、ことりとお茶が置かれて、あたしはまたそれを飲んだ。 「なんていうかさぁ・・・多分笹川へのツナの気持ちは憧れだと思うぜ?」 だから大丈夫だって、と山本があたしの頭を撫でた。 じわり、とその手のひらは温かくて。 「それにしても、ハル大好きなんだな、は」 いつのまに呼び捨てしてるんだ、とかそんなの全然気にならなかった。 お茶も頭の上の手のひらも、すごくすごく温かくて、優しくて。 あたしは涙が出た。 「?」 違うよ、違わないけど違うの。 あたしの涙は中々止まってはくれなかった。 |