ガチャリと扉を開くと、屋上の一人の少年がこっちを見た。 目があった瞬間、ちょっと困ったような顔をして頬を掻いて、それから近づいてきた。 「こんにちは、沢田君。今日は一体なんのご相談で?」 にたりと一つ笑うと、沢田君は色素の薄い髪を揺らして、えっと、と口を開いた。 どこか言いにくいみたいに視線をキョロキョロとさせて何も言い出さなくって・・・・・・もう、何かイライラしてきた。 「あと三秒以内に言わないと、ここから『沢田綱吉君14歳は三浦ハルちゃんが大好きです!』って叫ぶよ」 あたし声だけは大きいからね! 「わわ!ちょ、待ってください!!」 あたしの言葉に顔を真っ青にして止めるように言った。 そう、このあたしの屋上友達(略してオクトモ)は、緑中の三浦ハルという女の子が好きらしい。 実際あったことあるけど、明るくて優しくて魅力溢れるいい子だと思う。 そういえば、恭弥さんのこと知ってるみたいだったけど。 沢田君に恭弥さんの婚約者だよ、と紹介されて、思いっきり驚いてた(あの雲雀さんの!って)。 「で、今日はどうしたの?」 デートは成功したんでしょ?というと、沢田君は「そうなんですけど」と言葉を濁した。 「今日はそれじゃなくて・・・。先輩は死ぬ気弾について知ってますよね」 「え、ああ。わざとじゃないんだけどね」 あははと乾いた笑みで笑うと、それはいいんですけど、と沢田君が目を伏せた。 「その、ハルが俺を好きになったのって、死ぬ気のときだったんです」 「・・・・・・・・あー・・・」 そういえば、そんな話をしたような気もする。 「だから、ハルが俺を好きっていうのは、あの俺を重ねてるのかなって・・・」 これを、本気で言ってるんだから怖いよね、鈍感って。 「馬鹿だねぇ、沢田君は」 考え込んでる沢田君に聞こえないように呟いた。 たったのそれだけでずっと一緒にいれるものだと思ってるのだろうか、沢田君は。 それだけであんなに好きだと想い続けれると思ってるのかな。 でも、今は何を言っても、ハルちゃんじゃないあたしの言葉じゃ気休めにしかならないから、黙っておく。 「人の心が覗けたらいいのにね」 占い師みたいに水晶球で覗き込めたらいいのに。全部、気持ちを。 「そう、ですね・・・」 沢田君が困ったように笑った。 ハルちゃんみたいに言葉にしてくれるならまだしも、全然恭弥さんの心は見えない。 婚約者を変えないのだって今更面倒なのかもしれないし、従姉妹だからこれからも会った時面倒だって想ってるのかもしれないし。 好き、なんていわれたことないし。 「欲しいねぇ、水晶球」 他の人の心なんて見えなくていいから、未来も過去も見えなくていいから。 たった一人の心を見られる水晶球。 |