「よぉ、元気そうだな、恭弥」
応接室で恭弥さんのデスクワークを手伝っていると、金髪の・・・外国人?のお兄さんがやってきた。
後ろからスーツを来たおじさんもやってきた。

「貴方・・・また来たの?」
シャキン、と(一体どこから取り出してるんだろう)トンファーを構えて、恭弥さんがその外国人のお兄さんを睨んだ。

多分あたしだったら動けなくなっちゃいそうな睨みに、外国人のお兄さんはニカっと笑って平然としてた(凄いっ!)。
あたしが半分尊敬、半分呆然として二人を見上げてると、外国人のお兄さんがあたしの方を向いた。

「ん?可愛い子じゃねぇか。恭弥、お前の彼女か?」
「うるさいな。婚約者だよ」

「婚約者っ!?」
はぁ!?と外国人のお兄さんがものすごく驚いた顔をした。

そりゃ、確かにこの時代に婚約者って中々ないよね・・・珍しいもん。



「あ、俺はディーノ。恭弥の師匠だぜ、よろしく」
です。し、師匠なんですか?」
あの恭弥さんの。


そういいかけた途端に、ディーノさんの方にトンファーが飛んできて、それをディーノさんは(この人も一体どこから取り出したのか)ムチで跳ね返した。
その先にはものすごく怒ってる恭弥さんがいて、飛んできたトンファーをパシっとつかんだ。

「ねぇ、誰が誰の師匠だって?」
「照れるなよ、恭弥」
まったく日本人はシャイだな、とディーノさんが笑って、さらに恭弥さんの殺気がました。

「いい度胸だよね、あなた・・・。存分に咬み殺してあげるよ・・・」

うわ!怖いっ!!
もの凄い殺気にあたしは動けなくなってたけど、ディーノさんはまたニカっと笑った。


「まぁそう言うなよ。折角恭弥が欲しがってた情報手に入れてきたんだぜ」
情報・・・?
ピタリと恭弥さんの動きが止まって、殺気も消えた。



何が何だかわからないでいると、恭弥さんがあたしを見た。
、ちょっと外出てて」
「へ?」

「一時間くらい外行ってきなよって言ってるんだよ」
ギロリと睨まれて、あたしは「はぃい!」と裏返った返事をして急いで立ち上がった。

「それじゃまたなー」



ニコニコと笑って手を振るディーノさんに頭を下げて外に出た、瞬間。



『大事にしてんだな、あの子のこと』
ディーノさんの言葉が聞こえた。
恭弥さんの返事はなくって、さらにディーノさんが続けた。


『血なまぐさい話は聞かせたくないって?のこと好きなんだな』
想いっきり心臓が跳ねた。
ちょっとだけ沈黙が漂って、それから溜息混じりの恭弥さんの声がして、

『別に、どうでもいいよ』
あたしは音を立てないようにそこから急いで離れた。





聞かないことは簡単で



( ただこの両手で耳を塞いでしまえばいいだけなのだけど )